うずらのブログ

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改革への逃避は失政の始まり

ソニー>「売上高より利益」重視に AV事業分社化
「業績の立て直しに苦しむソニーが、飛躍の原点である音響・映像機器(AV)部門を本体から切り離して分社化し、消費者向けエレクトロニクス事業から距離を置く姿勢を明確にした。今後は事業ごとの収益責任を徹底し、投資判断を厳格化する。成長分野として今後の柱にすえた半導体など4事業の中から、ソニーブランドを支える強力な新製品やサービスを生み出せるか。改革の成果が問われることになる。「売り上げ規模をすべての事業領域で狙う機運が強かった。収益確保を最優先する」。平井一夫社長は東京都内で開いた経営方針説明会で、AV部門の分社化を含めた改革の狙いをこう説明し、部門間に残る「依存体質」を断ち切る姿勢を強調した。」(毎日新聞社2月18日(水)配信)

ソニーの凋落に歯止めが掛からない。

これまで数々のリストラを断行し、昨年にはVAIOブランドで有名だったパソコン事業を売却したのに続き、ウォークマンに代表される映像機器・音響部門の分社化に踏み切るようだ。
ソニーのDNAとも言える両部門を分社化せざるを得ないほど、その経営は危機に瀕していると言えよう。
ソニーは、ブランド力の維持向上に失敗し、新興国メーカーの安売り攻勢に押されて、ここ数年の決算は大幅な最終赤字を余儀なくされ、これまで1万数千もの人員削減を行ってきた。

だが、リストラに明け暮れたにもかかわらず、業績改善の兆しは見えない。
さきほどの記事の続きを読むと、“同社は15年3月期の連結業績で1700億円の最終(当期)赤字を見込んでいる。最大の原因となったスマホ事業では、販売地域や機種を絞り込んだうえで、部門で2100人の人員削減を行う「止血策」を進めているが、中国新興メーカーの台頭ぶりは激しく、利益貢献の道は険しい。(毎日新聞社記事より)”ようで、今回のリストラが最終着地点となることはあるまい。

世間には、アベノミクスと円安効果で大手企業の業績は好調だと浮かれる連中もいるが、そんなものはごく一握りにすぎず、ソニーのように不調のアリ地獄から抜け出せない大手企業も多い。
スランプに苦しむ大手企業と聞いて、筆者がいつも思い浮かべるのは、ソニーのほかヤマダ電機マクドナルドである。

ヤマダ電機は、最終決算こそ黒字を確保しているが、13年上期の中間決算で初の赤字に転落し、ここ数年減収減益が続いている。家電ネット販売への顧客流出やケーズデンキエディオンなどの追い上げもあり、牙城に綻びが見え始めている。
当社では、早くからネット販売の台頭を睨み、住宅販売・リフォーム事業や日用雑貨の販売事業を拡大させてきたが、事業や収益面での貢献度はまだまだのようだ。

マクドナルドに関する迷走ぶりは、くどくど書く必要もないほどで、残業代不払い問題や高価格路線への転換、店頭サービスの混乱をもたらした60秒キャンペーンやカウンターメニュー表の廃止、賞味期限切れ鶏肉の使用問題、異物混入問題など、枚挙に暇がない。
2014年通期連結決算では、過去最大となる218億円の連結当期赤字を計上し(対前年比では▲269億円)、2015年1月の売上高は月次で前年同月比マイナス38.6%と大幅に落ち込んでいる。

これら、ソニーを含めた3社に共通するのは、業績不振が続いているにもかかわらず、外部や世間の批判を一切受け容れようとせずに独自の「改革路線」に固執している点である。

リストラ疲れが明白なソニーに対しては、地理的マーケットを絞り込んだうえでのブランドの再構築と高付加価値戦略が必要との意見が多いが、当の経営者は、安易な事業の切り売りと人員削減策しか打ち出せず、毎期の決算発表では平井社長から「最後の構造改革をやり切る」というセリフを聞くのが、もはや恒例行事と化している。(これは任天堂も同じだが…)

いまどき、分社化や独立採算制なんて周回遅れ、それも3週くらい遅れている。
分社化により事業間のシナジー効果が減殺され、互いの技術シーズを持ち寄った研究開発の妨げにもなるだろう。
これまで、あまりに多くの事業を切り売りしたせいで、ブランドを再構築したくとも源泉となる基幹事業も見当たらない。終いには、「SONY」というロゴしか商品として残らないのではないか。

一方、ヤマダ電機に対しては、以前から、店員の接客態度が悪い、アフターサービスの質が同業他社に劣る等といった批判があった。
当社は、日経ビジネスが集計した「アフターサービスランキング(家電量販店部門)」で8年連続最下位という不名誉な記録を持っている。(2014年には「ブラック企業大賞」もダブル受賞)

だが、こういった批判や指摘に対して、当社は何らかの改善に向けたアクションを起こすどころか、日経ビジネスの発行元を提訴する(最終的には請求却下)愚挙に出て、周囲を呆れさせた。
また、経営構造改革の柱であった住宅やリフォーム事業、日配品販売事業等への進出も、肝心の家電売り場の縮小を招いただけで、ただでさえ色彩センスの悪い店舗の外観に加えて、強みであった売り場の展示能力が削がれ、いかにも中途半端な品揃えしかできなくなっている。
今のままでは、ひと昔前のスーパーやデパートに入っていた貧弱な家電売り場程度の規模しか維持できまい。

最後のマクドナルドだが、最近でこそ品質管理や生産工程管理の厳格化を求める意見が多いが、元々多く聞かれたのは、商品単価の高騰と店頭サービスの低下に対する指摘であった。要するに「ファストフードのくせにモノが高過ぎる(ついでにサービスもいまいち)」ということだ。

一時は低価格路線で業界を席巻した当社も、いつの間にか業界最高級路線を突っ走っている。
高価格帯のハンバーガーショップとして知られたモスバーガーの類似商品と比較すると、テリヤキマックバーガー320円:モステリヤキバーガー340円、とんかつマックバーガー399円:モスロースカツバーガー360円と遜色ないばかりか、いくつかの商品ではモスバーガーよりも高くなっている。

国民の所得が巡航速度で上昇しているなら問題ないが、実質賃金が1年以上に亘り減少する経済環境下で、何の付加価値向上の跡もない商品の価格だけが一方的に上げられることに反発を覚えない消費者はいないだろう。

だが、当の経営者には、そんな世間の声は届いていないようで、改革と称して24時間店舗の拡大やFCチェーンの拡大を行ったり、高級路線を狙っての店舗改装や既存の食材を使い回した奇抜な自己満足バーガーを発売してはコケるという愚行を繰り返している。

彼らは懸命に自社商品の付加価値向上を訴えているが、中味に変化のない商品の価値や評価が上がるはずがない。

以上、消費者ニーズを無視した経営戦略が頓挫しがちな事例を取り上げたが、これは経営だけでなく政治の世界にも共通する。
選挙のたびに行われる世論調査では、政治に求める要望として、「景気回復」、「雇用の安定」、「福祉の充実」などが上位を占めるが、現実の政治は、これらとは逆行している。

安倍首相は、平成27年2月12日第百八十九回国会における施政方針演説で、昨年のGDPがマイナス成長を予想していることなど放り出して、戦後以来の大改革に取り組むと的外れな演説に終始した。

首相は、農協改革(農協イジメ)、オープンな世界を見据えた改革(TPP断行)、医療改革(混合診療の促進、医療機関のコストアップ)、エネルギー改革(小売市場自由化=供給元の弱体化)、行政改革(官僚機構イジリ)、社会保障改革(介護福祉業界イジメ)、労働改革(雇用の不安定化と質の劣化、残業代カット)などを断行すると宣言した。

「改革」というセリフに自己陶酔し高揚する様は、小泉のバカを彷彿とさせるが、恐らくその行く末も同じような結果に終わるだろう。
すなわち、改革断行→デフレ招来→経済衰退→更なる緊縮・改革→デフレ深刻化という負のループを辿ることになる。

安倍首相は、演説の中で「はやぶさ2は、福島生まれの技術がもたらした小惑星のサンプルと共に、2020年、日本に帰ってきます。その時には、東北の姿は一変しているに違いありません。」と、はやぶさプロジェクトの偉業を自分の手柄顔で語っていた。
しかし、このまま三本目の矢を撃ちまくって日本の社会基盤を破壊し続ければ、恐らく2020年の日本経済は、GDPは450兆円程度に落ち込み、非正規雇用の割合が50%を超え、サラリーマンの平均年収も350万円くらいにまで減るような暗澹たる世の中に変わっているだろう。
5年後に帰還するはやぶさ2も、久しぶりに会った日本人があまりに元気を失っているのを見てびっくりするのではないか。

国民のニーズを無視した政治家が改革ごっこに逃げ込むのを放置すれば、そのツケを払わされるのは、間違いなく国民自身である。