うずらのブログ

積極的な財政金融政策による豊かで成長力に満ちた社会を目指します

目的と手段、原因と結果をすり替える愚者たち

『11月の銀行・信金貸出は5年半ぶり高い伸び、円安の影響も』 http://jp.reuters.com/article/topNews/idJPKBN0JM02920141208 「[東京8日ロイター]日銀が(昨年12月)8日に発表した11月の貸出・預金動向によると、銀行・信金計の貸出平残は481兆6974億円となり前年に比べて2.7%増加した。増加は37カ月連続で、2009年5月(3.1%増)以来、5年半ぶりの高い伸び。円安の進行に伴って都銀を中心に外貨建て貸出が円換算で増加したことも寄与した。11月の貸出は、10月の前年比2.3%増から伸び率が拡大した。日銀によると、引き続きM&A(合併・買収)やREIT(不動産投資信託)、電力向けなど大口の貸出が見られているほか、住宅・アパートローンを含む不動産向け融資も増加している。中堅・中小企業への広がりも見られている。」

この金融機関の貸出増加の報を受けてリフレ派の連中が小躍りして喜んでいる。
彼らにとって、昨年の株価上昇以来、久しぶりのプラス材料に気持ちが昂ったのか、「異次元の量的緩和政策(黒田バズーカ)のおかげで貸出が増えたぞっ!」、「マネーストックの金額の割に金融緩和政策の効果がショボイなんて言ったのは誰だ!」と鼻息を荒くしている。

日銀の資料(貸出先別貸出金(業種別,設備資金新規貸出))によると、確かに国内行の貸出残高は増加している。
特に、設備資金の新規貸出額(2014年7-9期中)は、10兆3,123億円と前年同期比で3,000億円以上伸びており、中でも化学・輸送機械を中心とする製造業や原発停止の後始末に追われる電気業で高い伸びを示した。 一方、設備資金の2大巨頭である個人住宅と不動産業はそれぞれ▲4.7%、▲1.5%と減少に転じており、今後の動向が懸念される。

世間知らずのリフレ派は、インフレ率と景気動向の関係と同様に目的と手段あるいは原因と結果を混同しがちだ。
彼らは、景気動向国民所得のことなど完全に無視して、フィリップス曲線なんかを持ち出してインフレ率を死守することに躍起になり、しばしば、周囲から失笑を買っている。
インフレ・ターゲットを金科玉条とするあまり、経済成長や国民所得の向上という大目標を見失い、インフレ目標を達成することが目標にすり替わってしまっている。

そこでは、いつの間にかインフレ=好景気という図式が大手を振って闊歩しており、「適正水準のインフレを許容できるだけの経済環境を創出する」という所期の目標はすっかり忘れ去られている。
黒田日銀総裁や岩田副総裁の口から出てくるのは、就任当初に定めた年限までにインフレ目標を達成できるかどうかという話ばかりで、増税と円安のダブルパンチで景気回復からすっかり置き去りにされた国民や中小企業の行く末を慮る言葉を聞くことはできない。

今回の貸出増加の件も、インフレ目標の話と同様に目的と手段がすり替えられていないか。

彼らは、貸出増加=景気回復と決めつけて論を進めているが、話はそれほど単純ではない。
現実の数字は冷酷なほど厳しいものだ。
・現金給与総額(一人平均)11月1.5%減(9ヵ月ぶりにマイナス)、実質ベースでは4.3%減(17ヵ月連続マイナス) ・消費支出(二人以上の世帯)10月0.7%減(4ヵ月連続マイナス)
・小売業販売額11月0.4%増(消費税増税分を除くと実質マイナス)
・乗用車8社の国内生産11月13%減(5ヵ月連続マイナス)、増税後初の2桁減少
・国内パソコン出荷台数11月41%減(6ヵ月連続マイナス)、出荷金額36%減少
・新設住宅着工戸数11月14.3%減(9ヵ月連続マイナス)、11月としては2011年以来3年ぶりの低水準
・住宅ローン新規貸出額4-6月期17.6%減 ・国内民生用電気機器出荷額11月17%減(2ヵ月連続マイナス)
・国内企業物価指数11月0.2%減(消費税を除く)

国内行の貸出は2011年以降、増加傾向にあり、一昨年から昨年にかけて2%台後半の伸びを見せているが、景気回復や経済成長の証拠足り得るわけではない。
実際、2005年~2008年にかけても今回と同程度に貸出が増加していたが、対米輸出が伸びたこと以外は経済指標は低迷しており、名目GDPも横這いに過ぎなかった。
本来なら、政府による正当な経済対策により実体経済に資金が投下され、そこを起点として民間主導の経済成長が実現し、その結果として資金需要が増して貸出が増える、という景気回復ルートが踏襲されるべきだろう。
そういった結果としての貸出増加なら、筆者も諸手を挙げて賛意を表したい。

だが、残念ながら実体経済の体温は低下の一途を辿っている。食欲はあるのに体調が悪化し続けているようなものだろう。
貸出増加=景気回復だ、あるいは、将来的な景気回復を示す先行指標だと都合の良い言い訳を続けていると、終いには痛い目を見ることになる。

“食欲が出始めたんだから大丈夫だ、もう薬は要らないね、さっそく運動でも始めようか”とばかりに病人に鞭を打てば、二度と病床から立ち上がれなくなるだろう。
いまこそ、きちんとした薬を処方すべきで、病室の温度を上げ下げしても日本経済と云う病人の症状は回復しない。

(※)読者の皆様、本年もよろしくお願いします。
年が明けても厳しい寒気に見舞われていますね。
最近、空気が乾燥しているせいか、リフレ菌が活発なようです。

本ブログの他に、「進撃の庶民」というブログで隔週日曜日にコラムを掲載しています。 次回の掲載予定は1月11日(日)です。
様々な執筆者の方から、非常に示唆に富んだ記事が投稿されていますので、ぜひご覧ください。http://ameblo.jp/shingekinosyomin/