読者です 読者をやめる 読者になる 読者になる

うずらのブログ

積極的な財政金融政策による豊かで成長力に満ちた社会を目指します

「インフレ期待、失業よりマシ、タイムラグ」という三大逃げ口上

1225日の日経新聞「経済教室」に、日銀の異次元金融緩和政策に関する岩田日銀副総裁の論文が掲載された。

岩田副総裁といえば、日本におけるリフレ派の大家として著名な学者だが、今回の論文は純度100%のリフレ派エキスに新自由主義者の濃縮エキスを添加したような内容に仕上がっている。

 

岩田氏の主張をまとめると次のようになる。

・異次元金融緩和(量的・質的緩和)政策の効果には賛否両論あるが、基本的には想定された効果を発揮している。

・「デフレもインフレも貨幣現象である」という政策レジームを採用することにより、家計・企業・金融機関等のデフレマインドを払拭し、その行動を根本的に変えることが金融緩和政策の核心だ。

・政策効果の波及メカニズムの出発点は、人々のデフレ予想を緩やかなインフレ予想にかえること。

2%の物価目標達成の過程で起きる円安は、資産効果や輸出産業、輸入競争産業の賃金増加による消費増加をもたらす。

非正規雇用が増えただけとの批判もあるが、多くの不就労者が職に就き賃金収入を得られることは評価すべき。

・金融緩和政策がもたらした需要拡大による物価上昇と消費税率引き上げによる物価上昇とは区別して評価すべき。

・金融政策が実体経済に影響を与えるまでには時間がかかる。

・実質賃金の持続的な上昇のためには、生産性の高い企業や産業への資源配分を妨げている規制改革や生産性向上に向けた取り組みが不可欠だ。

 

筆者は、現在の金融緩和政策を是とする立場だが、その効果は、低金利誘導による金融システムの安定化と実質的国債残高の減少(日銀の保有割合の増加)に限定されると思う。

(日銀が保有する国債の額は230兆円近くに達し、その分実質的な国債残高はレスされ、国債暴落論を唱えるバカを大人しくさせる圧力になり得る)

だが、リフレ派が夢想するように金融緩和政策が経済を力強く牽引し、ディマンドプル型の物価上昇を演出しているなどとは到底認められない。

 

いつものことだが、彼らの口癖の「デフレもインフレも貨幣現象」というフレーズにある「貨幣」が、何を指すのかいまひとつ判然としない。それは、貨幣の定義に返済を要するもの(借入金)が含まれるのか否かが明確ではないからだ。

景気が過熱してディマンドプル型のインフレが発生し、融資に回す資金さえ不足するような経済環境下ならば、貨幣の定義を広めに取ってもよいだろう。

そういったケースなら、確かに、金融市場のマネーの多寡や動きが実体経済に大きな影響を与え得る。

 

だが、現在のように融資に対する資金需要が弱い状態では、金融市場が実体経済に与えるプラスの影響は極めて軽微だ。

いわゆる“紐では引けても押せない”状態が発生し、いくら融資のための資金を積み上げても、それを借りようとする者(貸出先として適切な者)が大していなければ意味がない。

 

現在のように需要不足型の不況下において最も必要なのは消費と投資である。

ことに名目GDPにおいて大きな地位を占める「消費」を喚起するには、その源泉となる「所得」を増やすことが欠かせないが、それを生み出せるのは返済義務を要しない貨幣(所得や収入としての貨幣)のみである。

呑気なアメリカ人ならともかく、我が国には借りた金で消費し続ける者などそうそういるものではない。

消費は所得のコントロール下にあり、むしろ、「デフレはサイフの中の貨幣現象」と言う方が適切だろう。

 

金融政策の政策効果や緩やかなインフレ予想云々についても、大した根拠はない。

参考のために日銀が行った「生活意識に関するアンケート調査(59)20149月調査~」の結果を確認すると、

・現在の暮らし向きについて「ゆとりがなくなってきた」との回答が48.5%(3/38.1%6/43.7%)

・現在の収入を1年前と比べると「減った」との回答が42.4%(3/38.4%6/39.2%)

1年後を見た勤め先での雇用・処遇についての不安を「感じる」との回答が34.7%(3/30.6%6/31.5%)

・現在の物価に対する実感を1年前と比べて「上がった(かなり+少し)」との回答が80.4%(3/69.3%6/71.3%)

・物価上昇に対する感想について「どちらかと言えば困ったことだ」との回答が78.8%(3/78.6%6/78.1%)

といった具合に、改善されたものが一つも見当たらず、春先から数値が徐々に悪化していることが判る。

異次元金融緩和は、緩やかなインフレ予想に基づく積極的な投資や消費の活発化にはつながらず、収入減と物価高に挟み撃ちされて怯える人々を増やしただけに終わったというのが実情だろう。

 

ついでに、「現在の物価に対する実感の根拠」に関する回答(複数回答)で最も多かったのは、「頻繁に購入する食料品などの価格動向」で67.8%、次いで「ガソリン価格の動向」が68.1%で、人々のインフレ予想に大きな影響を及ぼすはずの「日本銀行の金融政策から」という回答は、最下位の3.8%に過ぎなかったのには、失笑を禁じ得なかった。

要するに、ほとんどの国民は日銀の金融政策なんか眼中にない、ということなのだ。

 

また、金融緩和政策による円安が輸出産業等の賃金増加につながるとの主張は、光の当たる一部分のみを切り取った詭弁に過ぎない。

輸出型産業の代表格である自動車や家電産業のGDPに占める割など、ほんの数%に過ぎないし、これに旅行サービス業などの輸入競争産業を加えても、マクロ全体でみれば誤差の範囲内だろう。

厚労省が発表した11月の従業員1人当たり平均の現金給与総額は前年同月比1.5%減と9カ月ぶりにマイナスに転じ、実質賃金も前年同月比4.3%減と17カ月連続で減少しており、ごく一部の産業従事者の賃金が上がったところで、マクロ全体に及ぼす影響などたかが知れていることが判る。

 

岩田氏は、「非正規が増えても構わない、失業するよりマシだろう」と言い放つが、いかにも人間味に欠けた血の通わないリフレ派らしい見解だ。

ライフスタイルの都合で敢えて非正規を選択する者は別として、非正規雇用の罠に一旦嵌ってしまえば、正規雇用へステップアップできる者はほんの僅かだろう。

本来なら、非正規雇用のような短期雇用の場合、雇用条件の不安定さと引き換えに高収入が保証されてしかるべきだが、現実はバイトやパート扱いとほぼ同様で、低賃金で都合よく使われるだけだ。

失業よりマシどころか、雇用の質の悪化を後押しし、それを既成事実化するようなもので、到底受け容れられない。

 

リフレ派の連中は、アベノミクスや金融緩和政策のお蔭で非正規雇用のイスが増えたように喧伝するが、非正規雇用などリーマンショック後の一時期を除けば、2005年以降、常に1.3~2.4くらいの有効求人倍率を維持してきた。つまり、アベノミクスが始まる以前から、望めば何時でも就ける程度の職であったということだ。

失業者が非正規雇用になるチャンスは、最近になって急に増えたわけではなく、ずっと前から門戸が開かれていたのだから、非正規雇用の増加をアベノミクスや金融緩和政策の手柄のように語るのは、まさに失笑ものの行為である。

 

また、金融緩和による物価上昇と増税による物価上昇を分けて考えろ、消費税増税の影響を除けば実質賃金や実質雇用者所得は伸びているぞ、などという詭弁を弄しているが、そんなものは国民生活に一切関係ないことだ。

スーパーで値上がりした商品の値札を見て、金融政策分が〇〇円、増税分が〇〇円なんて勘定する暇な人間はいない。

リフレ派が礼賛するアベノミクスのメインストリームは、増税と歳出削減を柱とする財政再建路線にあるのだから、“増税分を除けば”といったような仮定自体が成立しえないのが、まだ判らないのか。

敗戦の事実を受け容れられずに、「6回表に打たれた満塁ホームランを除けば自軍が勝利していた」と満足するようなものである。

 

お得意の「タイムラグ論」も見苦しい限りだ。

黒田バズーカ第一弾をぶっ放して一年半以上が経とうというのに、景気が上向かないどころか、GDPのマイナス成長が予想されるなど、金融緩和政策による実体経済への好影響が全く感じられない。

金融緩和により大量の食器は用意されたが、肝心の食べ物や飲み物は一向にやって来ず、国民の空腹が収まる気配はない。

第二の矢を忘れ、使われもしないベースマネーを供給し続けても消費が盛り上がることはない。

このままでは、「タイムラグ」はリフレ派が唱える永遠の合言葉と化すだけだろう。

 

岩田氏の主張の最後の部分、規制緩和や生産性向上が重要云々については、不況の原因を供給側に求める初歩的な過ちに基づくものであり、論評に値しない。

モノを作ったことも売った経験もない素人の典型的な勘違いで、魅力ある商品や良いサービスを提供すれば、いくらでも買い手がいると思い込んでいる。

戦後間もないモノのない時代じゃあるまいし、そんなものは世の中にいくらでも溢れ返っている。

便利な商品なんてたくさんあるが、それに買い手が付かないから企業も四苦八苦しているのだ。良い商品を出せばいくらでも売れるなんて、昭和の価値観に染まった時代遅れの思考でしかない。

 

岩田氏だけでなくリフレ派の連中は、信奉する金融緩和政策の成果を傷つけまいと、あらゆる詭弁を弄して擁護を続けている。

しかし、事実を糊塗するうちに、経済成長を実現させることよりも自身のプライドを守ることが優先され、まさに主客転倒した状態に陥っており、現実を冷静に判断できていない。

 

異次元金融政策(美しい食器)が真価を発揮するには、そこに盛り付けられる豪華な料理(積極的な財政政策)が必要だろう。

だが、狂信化したリフレ派の歪んだ信念が、金融緩和政策を財政政策から遠ざけ孤立化させている。

金融緩和政策は、真の実力を発揮できないもどかしさをこらえ切れず、財政政策に援軍を求めて悲鳴を上げているが、取り巻きの連中はそれを許そうとしない。

史上空前の異次元金融緩和政策が空砲に終わるようなことがあってはなるまい。

リフレ派の連中は、いまこそレジームチェンジを求められている。




 

()

今年も1年間ご愛読いただき、誠にありがとうございました。
読者の皆様も、どうぞよいお年をお迎えください。

本ブログの他に、「進撃の庶民」というブログで隔週日曜日にコラムを掲載しています。次回の掲載予定は1228()です。

様々な執筆者の方から、非常に示唆に富んだ記事が投稿されていますので、ぜひご覧ください。http://ameblo.jp/shingekinosyomin/