うずらのブログ

積極的な財政金融政策による豊かで成長力に満ちた社会を目指します

疫病神に賽銭を渡す愚か者

“12月2日に公示される衆議院選挙を前に記者クラブやネットでの党首討論が開催され、早くも与野党党首による舌戦が展開されている”と書きたいところだったが、公示前にして、既に期待外れな展開になっている。

安倍首相自身が明言しているように、今回の選挙の争点は「アベノミクスの成否を問う」ものであるはずだが、議論の初手から見当違いの方向に進もうとしている。

ある討論会で、安倍首相は、「我々が政権を引き継ぐ前、民主党政権時代、3四半期連続のマイナス成長でありました。我々が政権を引き継いで、3四半期連続プラス成長になりました。有効求人倍率も、過去22年間で最高の水準にあります。そして賃金も、この4月の賃上げのチャンスを活かして、2%以上あがりました。15年間で最高であります。ボーナスは7%、これは24年間で最高の水準になっています。そして倒産件数、民主党政権時代よりも2割も倒産件数が減っているんです。そして正規社員、この7月8月9月、10万人増えました。民主党時代は、雇用全体が減っていたんです。私たちは100万人増やし、さらに正規の社員を増やしています。これからさらにアベノミクスを進め、全ての人々にこの景気の暖かい風をお届けしてまいります」と手柄顔で語っていた。

しかし、彼が自慢する数値データは、いずれもアベノミクスの初期段階に放った第二の矢の残滓と消費税増税前の駆け込み消費のおかげで稼いだもので、その他の経済パフォーマンスが惨憺たる結果に終わったことには口を拭っている。
その姿は、チームが逆転されていることを無視して、初回の得点シーンを滔々と語るネジの緩んだ監督のようだ。

彼は、「全ての人々にこの景気の暖かい風をお届け」するつもりらしいが、実際に届くのは、構造改革規制緩和まみれの爆弾低気圧と再増税や緊縮財政による大寒波だろう。
(気持ちの悪い宗教政党の党首の話は省いておく)

一方、与党を追撃するはずの野党の主張も頭痛がするものばかりだ。

今回の解散は、増税後にGDPが2期連続でマイナス成長という異常な事態を受けてのものであり、本来なら、安倍政権の経済失政が声高に叫ばれ、アベノミクスが完全に失敗だったとレッテル貼りされても仕方がないくらいの状況だ。
リフレ派のバカは、あいかわらず「永遠のタイムラグ」という魔法を使って擁護しているが、名目賃金も実質賃金も低調な動きを示し、実体経済への目立った波及効果が無い以上、国民の目に映るアベノミクスはとても成功したとは言い難いだろう。

であれば、野党各党にとって、今回の選挙は非常に闘いやすいはずだが、最近の世論調査の結果(安倍政権不支持だが、投票先は自民党という回答割合が多い)を見るとそうはなっていないようだ。
これは、不意打ち解散により野党の選挙態勢が整っていない、という理由によるものではない。
国民の多くが、アベノミクスに対する不満の受け皿がないと感じているのは、民主党と維新の党という二大野党の掲げる政策のベクトルが、アベノミクスを炎上させた主犯格の悪手を擁護する方向を指し示しているからだろう。

例えば、民主党は選挙公約で、「厚く、豊かな中間層を復活させる」と記しながら、「財政健全化推進法を制定。国と地方のプライマリーバランスの20年度黒字化に向け「歳出改革」「成長戦略」「歳入改革」を推進」すると謳っている。

前回の選挙で大敗北した要因をいまだに理解できないバカ者ぶりに呆れるばかりだ。
彼らは、国家の経済運営を家計簿と混同する幼稚な主婦レベルの発想から抜け出せていない。
財政健全化法みたいな最悪の法律を通してしまえば、実体経済に供給される資金は急激に細り、GDPは未曽有の急減に見舞われ、中間層など木っ端みじんに砕け散ってしまう。
彼らは、せいぜい、ガソリン値下げ隊辺りが適任だろう。

もうひとつの維新の党だが、こちらも期待通りの勘違いぶりで、11月28日のネット党首討論で、江田共同代表は「アベノミクスの第一の矢である金融緩和はカンフル剤でしかなく、第二の矢は公共事業のばらまきに終始し、第三の矢は肝心要の規制改革ができていない。本格的に景気を回復させるためには実体経済を動かすことが必要で、成長分野の規制改革を行って新規参入を促すことが必要だ」と述べた。

さすがに、世間知らずの中学生市長が率いる党だけあって、構造改革臭に塗れた世迷言を堂々と語っている。
彼らは、消費税再増税にこそ慎重な姿勢を示すものの、経済成長に関する認識が根本から間違っている。

民主党にしろ、維新の党にしろ、経済とは何か、経済成長とは何かを具体的に理解できないばかりか、経済を家計や経営と混同し、国家財政とお小遣い帳との区別もついていない。
だからこそ、実体経済を置き去りにして、改革だの財政健全化だのとくだらぬことに血道を上げるのだろう。

そもそも、与野党を問わず、最近の政治家の連中の思想や発言から、国民の生活を豊かにしようという、政治家として最も重要な気迫や意識が、まるで感じられないが、それこそが最大の問題である。

だが、一概に政治家ばかりを責めてもいられない。

政治家が国民生活をそっちのけにして、幼稚な改革ごっこに熱中するのも、国民の間に、経済成長を諦めて改革や規制緩和に逃げ込もうとする卑しい風潮が蔓延していることを敏感に感じ取っているからなのだ。

彼らが、身を切る改革とか平成の開国みたいな陳腐な言葉に酔いしれるのも、多くの国民が、そういった虚語に対して強いシンパシーを抱いていることを十分に理解したうえでのことだろう。

先日、とあるネット番組で、一般ユーザー同士が消費税再増税に関して討論しているのを聴く機会があった。
増税に関しては賛否両論に分かれたものの、増税に反対する論者からも、これ以上の公共事業は厳に慎むべきとの強い意見が出され、他の者も賛意を示していた。

議論の中では、「公共事業は人手不足を煽っている」、「公共事業乗数効果は1未満だ」、「公共工事をやってもその後のメンテナンスにカネがかかる」、「公共事業はカンフル剤で役に立たない」、「公共事業でカネをばらまくより給付金で国民に渡すべき」みたいな、頭がクラクラする愚見が飛び交っていた。

公共事業で人手不足が発生するなら、雇用者報酬の引上げにつながることでもあり、大変喜ばしいことだが、彼ら(たぶん全員が普通のサラリーマンか非正規雇用者)にはそれが納得できないらしい。

公共事業乗数効果が1未満という頭のおかしな見解(事業費を支出した時点で乗数1がカウントされる)はさておき、同じ口から、公共工事のメンテナンスにカネがかかるという意見が出るとは片腹痛い。
メンテナンスにカネがかかるというが、そのメンテナンス費用の大半は、国内企業の所得に化けてGDPに加算されるのだから何の問題もない。
将来に亘って広義の乗数効果を発生させるのだから、むしろ望ましいことではないか。

公共事業GDPの主要な構成メンバーであり、カンフル剤どころか常食と言ってよい。 海外のマーケット動向に大きく左右される純輸出こそ、カンフル剤と呼ぶべきだろう。(とい
うより、ほんのオマケといった方が適切か)

公共事業より給付金や減税をやるべきという意見も強いが、これらを無理矢理トレードオフの関係に置く必要はない。
筆者は、現時点での減税や給付金、社会保障費の国庫負担率の大幅な引き上げ等の政策は、国民への所得移転につながり、その購買力を高めるものと理解している。

公共事業か減税か、という視点ではなく、必要なら両方やるべきである。

ここ20年余りの経済不調は需要不足が主因であり、最も有効な処方箋は国民の所得を増やして購買力を高めること(=明確な成長期待を抱かせること)だろう。
そのために有効な政策なら、AかBかの議論ではなく、AもBも包含するような前向きな議論をすべきだ。

先のネット番組の討論では、論者の一人が、盛んに「日本はもう成長できない。身の丈に合った政策をすべきだ」と偉そうに捲し立てていた。
だが、経済と云うものは成長することが常態なのであり、「身の丈に合う=ゼロ成長orマイナス成長」を受け容れようとするのは、非常に危険でバカげた発想だ。
成長することが経済の栄養そのものなのに、自らそれを絶とうというのだから呆れて開いた口が塞がらない。

勤勉な国民や企業が生産性を高め、それに伴い自然と経済規模が拡大するのが当たり前なのに、毒薬や拘束具を使って成長を押し止めようとすれば、身体に異変が生じるだろうことは子供でも理解できる。
そして、そういった異変によって真っ先に割を喰うのは、間違いなく、そのネット討論に参加しているちっぽけな連中なのだ。

今回の選挙結果を予想するつもりもないが、国民が自分の頚を絞める悪手を進んで選択する愚かな発想を改めないことには、何度選挙をやっても、選挙後に同じような悪夢が繰り返されるだけだろう。