うずらのブログ

積極的な財政金融政策による豊かで成長力に満ちた社会を目指します

成長戦略は衰退戦略

中小企業の団体としては商工会議所や商工会が知られているが、これらとは別に中小企業家同友会(中同協)という組織がある。
通称「同友会」と呼ばれ、商工会議所と同様に、都道府県ごとに地方組織がある。ただし、会への加盟は企業単位ではなく、あくまで経営者単位(個人)で行う点が、商工会議所等の経済団体と異なっている。
全国の会員は約43,000者、平均的な企業規模は、従業員30名、資本金1,500万円とされている。

中同協のHPによると、「同友会は、(中略)政治にたいする同友会の姿勢は、会の目的を達成するために、どの政党ともわけへだてなく接触しますが、会としては特定の政党と特別な関係をもたないようにします。会員個人の思想・信条の自由は当然のこととして保障されています」と明記され、不偏不党の姿勢を打ち出している。
(実際は自民党寄りの会員が多いが…)

同友会は、商工会議所や商工会みたいな団体とは一線を画す、いわば、“経済界の党内野党”的な立場で活動することが多く、行政機関とも一定の距離を置く一風変わった団体なのだ。
筆者も、会員の経営者を幾人も知っているが、よく言えば、行政に依存しない自主独立の気風を持ち会員同士の切磋琢磨に熱心だと言えるが、総じて、ヤル気が空回りしがちで周囲の意見を聴かない独りよがりな経営者が多いという見方をしている。

彼らは、新商品開発や研修、人材育成に熱心だが、いつも、誰も買わないようなつまらぬ商品ばかり作り、失敗を繰り返している。
自主独立を旗印に掲げるだけに、金融政策や公共事業のような政府主導の経済政策には批判的な意見を持っている。
例えるなら、青年会議所の青臭い連中から少々政治臭を除いた程度の集まりと言ったら理解しやすいだろうか。

この同友会の会長が、今回の衆院選に当たって次のようなコメントを発している。

「当会の景況調査結果でも、前年同期比の業況判断DI値は、7~9月期にさらに悪化し、次期、次々期の見込みもマイナス予測で、今後も回復の兆しは見られません。円安等による仕入れ価格の増大や採用難は経営上の大きな問題となってきています。また、同調査では、この1年半「借入を増やした」企業は3割にも満たず、「異次元金融緩和」の効果は6割が「感じない」という結果です。 (中略) 総選挙に当たって、各党および各候補者のマニフェストや公約には以下の内容が盛り込まれることを期待します。

1.法人減税の代替財源としての外形標準課税適用拡大や中小企業税制の縮減などは中小企業の事業意欲をそぐものであるので、将来にわたって中小企業への課税強化を行わないこと。

2.消費税率引き上げの条件である「経済状況の好転」(景気条項)を遵守し、家計や中小企業の指標など社会全体に好況感が行きわたるまでは、消費税の10%への引き上げを行わず、引き上げ時期および実施すべきかどうかについては再検討すること。

3.円安等による仕入れ価格の増大について価格転嫁できるよう政策的に配慮すること。

4.大企業からのトリクルダウン効果にのみ依存するのでなく、直接中小企業振興につながる経済政策をすすめ、全国津々浦々に景気効果が出るようにし、地域の活性化を図ること」

彼らの主張のうち、異次元緩和や円安の政策効果がほとんど役立っていないこと、政府が導入を進めようとしている外形標準課税の拡大が中小企業の経営を圧迫すること、消費税10%への再引上げに強い抵抗感を持っていること、トリクルダウン依存の考え方を採らないこと等といった点は首肯できる。

むしろ、消費税再増税を控えた政府の景気点検会合で、「社会保障の安定的な執行を考えて税率10%は必要」と述べた日本商工会議所の会頭や「3党合意に基づく法律に沿って、粛々と進めるべきだ。足元で景気回復の実感はないが、社会保障の安定は待ったなしの状況だ」と述べた連合会長に比べて、はるかにマシな現状分析力を有していると言えよう。
だが、そんな彼らも、現状の苦境を打破するための解決策となると、急に凡人化してしまう。 (この辺りは、分析一流・対策五流の共産党によく似ている)

同友会が発表した「同友会景況調査報告」には“円安・物価高、不況がらみの二重苦、中小企業を直撃”と主題が振られ、今年4月の消費税率8%への引上げが7~9月期の経済低迷を招き、中小企業が苦境に立たされていると指摘し、現状はアベノミクス発の物価高と不況の共存= スタグフレーションの現出であると断罪している。

レポートには、アベノミクスの効果は一部の大企業に限定され、ほとんどの中小企業は回復基調に乗れず企業間格差は開く一方になっていると分析している。
そして、レポートでは、こうした不況への対応策として、「長期停滞覚悟で強靭な経営体質づくり」と「全社員の創造力発揮型経営への挑戦」が鍵になると結んでいる。
要は、人件費を中心とする更なるコスト削減と新規受注獲得に注力せよという、すでに何千万回も聞かされた空念仏を繰り返しているだけなのだ。

これとは別に、とある県の同友会会長が、外形標準課税拡大を批判するコラムを地元新聞に寄稿しているのを見たことがある。
そこには、外形標準課税拡大の弊害を指摘する文章が並び、その部分は良いとして、「さらなる税負担を強いるという安易な策ではなく、成長戦略によって黒字法人を増やすことこそ、経済政策の腕の見せどころではないか」という結論部分を読み、力が抜ける思いがした。
外形標準課税や消費増税の弊害をデータに基づき具体的に指摘できる分析力を持ちながら、なぜ、成長戦略(第三の矢)が黒字企業を増やすと妄信するのか。

「第三の矢が飛ばなかったことが経済失速の原因」だと寝惚けたことを言っている維新の党と同じく、経済の本質を理解しようとしない夢想家は後を絶たない。

結局、彼らも経営と経済を混同する無間地獄に陥っているのだろう。

前述のレポートに謳われた「全社員の創造力発揮型経営」を担保する新規受注(=売上)を、一体どこから取ってくるつもりなのか。
この点を理解せぬまま、いくら妄想を膨らませても、現実の売上は上がらない。
自社の商品やサービスが売上に転化するには、それを購買する相手と購買に用いられる資金が必要になる。
いくら意気込んでも、それを買おうとする者と買うためのおカネがない限り、売上が立つことはない。
自己満足に塗れた不良在庫が倉庫に積み上がるだけだ。

この同友会みたいに時代遅れのサプライサイダー神話に囚われた田舎者は数知れないが、不況が始まって20年近くになろうというのに、いい加減に目を覚ませと言いたい。

黙って、第一の矢と第二の矢を撃ちつづければ良い。
いま議論すべきなのは、この二本の矢の量と中味のみである。