うずらのブログ

積極的な財政金融政策による豊かで成長力に満ちた社会を目指します

「増税延期論」は条件付き賛成と同じ

先月31日に行われた日銀金融政策決定会合では、珍しく、事前の予想を大きく裏切る形で大型の追加金融緩和策が飛び出した。

エコノミストの間でも、今回の追加緩和を予想する意見は極めて少数だったと言われるが、政策決定の過程で政策委員9名中4名が反対票を投じたようで、今回の追加金融緩和策がかなり唐突な提案であり、金融政策決定会合の現場も少なからず混乱したのではないかと推測される。

 

追加金融緩和の内容は、

・マネタリーベースが、年間約80兆円(約1020兆円追加)に相当するペースで増加するよう金融市場調節を行う。

・長期国債について保有残高が年間約80兆円(約30兆円追加)に相当するペースで増加するよう買入れを行う。(買入れの平均残存期間を7年~10年程度に延長)

等を柱とするものだが、GPIFの株式運用比率見直しを支える内容であることが好感され株式市場は高騰し、円安も一気に加速した。(この記事を書いている時点の日経平均17,000円を突破し、円ドル相場は1ドル=114円台になっている)

 

1029日にFRB量的緩和政策の手仕舞いを発表したのとは対照的な内容であっただけに、FRBに代わる新たな資金供給源の出現に安堵した海外市場の連中も、「スーパーアグレッシブな動きだ。ミスター・クロダに酒をおごらなきゃ」と卑しくヨダレを垂らしている。

 

今回のサプライズ緩和は、消費税率10%引上げを目論む安倍首相への援護射撃であり、再増税への布石だというのが大方の見方だが、筆者もこれに同意する。

増税を押し切るだけの好材料に乏しいうえに、閣僚のスキャンダルでダメージを受けた政権サイドへの強力なアシストであると受け取るのが自然だろう。

金融緩和と聞けば無条件で狂喜するリフレ派の連中も、それが再増税へのトリガーになりかねないと警戒しているのか、いまのところは大人しくしている。

 

4月の8%への税率引上げ以降、家計や企業統計に関わる景気指標はことごとく悪化しているうえに、昨今の円安や原材料コスト高騰に起因する食糧やエネルギー価格の高騰もあり、前回の税率引上げの際には政権の太鼓持ちに徹していたバカマスコミの連中も、さすがに、再引き上げを一方的にヨイショする元気はないようで、税率引上げに慎重な論陣を張るマスコミも増えている。

おまけに、第二次安倍内閣の閣僚の辞任や不祥事の問題もあり、首相も再増税に関して強気一辺倒を押し通すのはマズイを感じたのか、一時期、再増税を慎重に判断するニュアンスの発言をしていた。

 

だが、首相の口から出てくるのは、熟慮するとか慎重に判断するとかいう曖昧な逃げ口上ばかりで、再増税を見送る際に生じるであろう増税賛成派(経済を理解できない頭の悪い連中)に対する具体的なアクションについては、全く言及してこなかった。

安倍首相は、再増税に対して慎重なポーズを取りながら、大型の追加金融緩和というサプライズが出現するまでの時間稼ぎをしていたのだろう。

 

消費税再増税に向けた地均しは、既に始まっている。

今日から、税率10%への引上げの是非を巡り、有識者45名からなる景気点検会合が開かれている。(初日は8名のうち5名が増税に賛成した)

当初は42名で開催予定だったが、有識者の構成が増税賛成派ばかりだという指摘を受けて、急遽慎重派が3名追加された。

昨年にも同じ趣旨で会合が開かれたが、世間知らずの雲上人による消費税率引上げへの決起大会と化してしまった。

有識者の顔ぶれを眺めても、一部に増税反対派や慎重派がおり、身を切る改革の実行や生活弱者への配慮を促す程度の意見は出るかもしれないが、総じて、増税止むなしとの結論は変わらないだろう。

 

また、今回の黒田バズーカ第二弾の陰に隠れて、消費税引上げ後の景気失速をケアするために、政府内では3兆円規模の補正予算(経済対策)を検討しているようだ。

予算規模に“0”が一つ足りないという突っ込みもさることながら、経済対策の内容は、低所得者への給付金支給(漁船の燃料や寒冷地での灯油購入費用の助成等)が中心で、公共事業は必要最低限の防災対策のみに止めるとの見方が強い。

まるで都道府県や市町村レベルかと見紛うようなしょぼい内容を、わざわざ経済対策だなどと銘打って恥ずかしくないのだろうか。

8%への増税による経済不調は家計や企業の大多数に及んでいるが、政府が重い腰を上げて打とうとしている対策は、低所得者に対する灯油購入費の一部助成みたいな極めてチンケなもので、スズメの涙にもなり得ない。真冬にマッチを擦って暖をとろうとするようなものだ。

政府や与党は、現状の経済状態に対する危機感を全く持っていないようだ。

 

麻生財務大臣は、「お金だけ来ても企業は設備投資を増やさない。政府支出とリンクしないとうまくいかない」と言っているようだが、まず、金融緩和をしたところで、誰かの懐に“お金が来る”訳ではないことを理解していないのではないか。

肝心のお金は、日銀当座預金という揺り籠の中で眠りこけているだけで、誰かの所得になって実体経済を飛び回るようになるには、黒田バズーカに負けないような大規模な財政支出が欠かせない。

だが、実際に、政府内で検討されている経済対策に至っては、子供の小遣いにもならないほど貧相なものだ。

 

安倍首相は、121日頃に消費税率の再引上げを判断するようだが、現状の情勢から判断すると、規定どおり再引上げを強行するだろう。

今回のサプライズ緩和、景気点検会合、補正予算…これらは全て、再引上げに向けた地均しやパフォーマンスだと判断する。(パフォーマンスだけに、円安の悪影響が出てくれば、あっさりと金融緩和を取り止めるだろう)

仮に、首相や与党が再引上げを覆す可能性を選択肢に加えるつもりなら、少なくとも23ヶ月前から増税凍結法案や家計や中小企業向けの経済対策の策定作業といった具体的なアクションを起こしてしかるべきだが、首相の口から出てくるのは、一部の支持者兼増税慎重派(リフレ派の連中)を手なずけるためのリップサービスばかりだ。

奇しくも、政府やバカマスコミの連中から、12月の衆院解散説が流布されているが、これも閣僚のスキャンダル拡大や増税反対の動きに対する脅し文句と理解している。

 

広い世間は別として、永田町や本石町、霞が関界隈では予定通り増税すべしという声が圧倒的で、情けないことに、与党内で反対しているのは一部の中堅・若手議員しかいない。あとは、マスコミさえ黙らせてしまえば一丁上がりだろう。

来春の地方選を心配する声もあるが、3党合意の経緯もあって公明党民主党増税に前向きであり、大きな争点になりそうにない。むしろ、原発再稼働問題の方が争点化しやすいだろう。

 

政府は着々と再増税に向けた布石を打ち、足場固めを進めている。

方や増税反対の動きは、先送りや延期を唱える慎重派と凍結や減税・廃止を求める反対派との間に、大きな温度差があり、いまひとつ歩調が揃っていない。

増税反対の意見としてマスコミが取り上げるのは、1年半くらい増税を延期すべき(本田参与を始めとするリフレ派の連中)という「条件付き賛成派」の声ばかりで迫力に欠ける。

 

日本における消費税という税制は、一旦税率を引上げると元に戻せない事実上の“ラチェット税制”であり、将来に亘り経済成長を抑制し続けるアンカーとなってしまう。

少々延期したところで、中長期的にGDPの伸びを阻害する毒薬になることに変わりはない。

ましてや、15年デフレに苦しみ抜いてきた日本経済の惨状を鑑みれば、増税という選択肢など端からあり得ず、減税か廃止かという議論こそすべきである。

 

そもそも、恒久的な影響を及ぼす税制論議を四半期の経済状況で判断すること自体が大間違いなのだが、バカマスコミや多くの国民は、こうした政府の愚行をあっさり見過ごしてきた。

だが、4月の増税以降、あらゆる経済指標は悪化の一途を辿り、国民は再び厳しい現実を突きつけられている。

首相や与党を支持しながら増税問題という局地戦で条件闘争しても効果は薄い。ちまちました条件闘争ではなく、あくまで減税や廃止にまで踏み込んだ主張をすべきだ。

 

頭のおかしな増税賛成派はいつもワンパターンで、「増税見送りは国債の信認に悪影響を及ぼす」、「増税を見送れば諸外国からはアベノミクスの敗北宣言と取られかねない」、「増税しないと社会保障財源を確保できない」等々、幼稚なテンプレート型の言い訳を棒読みするばかりだ。

今日行われた景気点検会合では、賛成派の政策研究大学院大 伊藤教授(元リフレ派)が「増税を延期すれば、法案を出し直す政治的コストが大きくなる」と述べ、一方では、慎重派の内閣官房参与 浜田氏は、10%への増税171月か4月に先延ばしすべきだと主張し、「無理して増税し、(首相の経済政策である)アベノミクスへの世界の信頼がなくなる方が怖い」と語ったそうだ。

 

両者の主張は違えど、国民生活や国民経済に立脚する視点が全く感じられない点はほとんど一致している。

彼らの口から出てくるのは、“政治的コスト”とか“アベノミクスへの信頼”みたいな薄っぺらい言葉ばかりで、増税が国民生活や企業経営に与える影響について一切語ろうとしない。

この程度の連中が識者として招集されているようでは、まともな政策判断などできるわけがない。