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うずらのブログ

積極的な財政金融政策による豊かで成長力に満ちた社会を目指します

昭和の価値観

消費税8%への増税による春先からの景気悪化に加えて、第二次安倍政権の女性閣僚辞任問題が重なり、消費税再増税に対するバカマスコミの論調も慎重な姿勢に変わってきた。
マスコミ各社の世論調査でも、10%への再引き上げには6~7割が反対している。

政権与党内にも再引き上げに慎重な意見 (その本気度はかなり疑わしいが…) が噴出しているそうで、安倍首相の判断に何らかの影響を与える可能性はある。

政府機関から発せられる「景気は底堅い」とか「景気は緩やかに回復基調にある」という大本営発表も、『スーパーの売上高6ヵ月連続減少(日本チェーンストア協会)』、『白物家電出荷額4~9月6.3%減(日本電機工業会)』といった厳しい現実の前には空しく聞こえる。

両会とも、足元の不調を天候不順のせいだと言い訳しているようだが、百歩譲って天候不順が業績に何らかの悪影響を与えたとしても、所詮は天候に左右される程度のパワーしかない見せ掛けだけの景気回復だったということだろう。

エネルギーや食糧価格の高騰に加えて、アベノミクスの恩恵が一部にしか波及していない現状から、国民の多くは10%への再引き上げに慎重な見方をしており、この点ではおおよそのコンセンサスが共有されるだろう。

しかし、経済環境の悪化への対応策として、新たな経済対策(財政出動)を求める段になると、皆の意見がガラッと変わる。

アベノミクスの恩恵を享受できていない地方への経済対策、雇用の不安定な若年層への就職支援にまで話が及んだ途端に、あちらこちらから反対意見が噴出するから不思議なものだ。

「怠け者だらけの地方、原発利権にタカって甘い汁を吸った地方に、またカネをバラまくのか」、「仕事なんて探せばいくらでもある、仕事を選り好みするな」、「若いうちは給料が安くても我慢すべきだ」、「仕事が見つからないなら起業すればいいじゃないか」という、もはやお約束の域に達した罵詈雑言が浴びせられる。

この手の妄言を気軽に吐く世間知らずのバカ者は、極めて近視眼的かつ前時代的な思考力しか持っておらず、若者やサラリーマンの努力不足論や自己責任論をタレ流すしか能がない。

彼らの思考は、バブル崩壊以前で停止したままだから、「佐川急便のドライバーでもやれば月70万円くらいは簡単に稼げる」、「不況を言い訳にするのは怠け者だ、俺の周りにいる起業家はみんな儲かってるよ」なんて甘っちょろいことを平気で言う。

だが、実際の佐川急便のドライバーの求人条件を確認すると、月収70万円なんて夢のような給料を貰っている者はいない。

同社の東京・神奈川・千葉・埼玉地区の求人条件を確認すると、勤務時間7:30~16:30(残業あり)、月給16~21万円(+残業・深夜手当)、賞与なし、休日は月9日という非正規雇用並みの待遇でしかない。

一応、正社員のモデル給与が月収36万円になっているが、これとて月給20万円に諸手当と残業代9万円余りを加算しないと到達しない。

首都圏でさえこの程度なのだから、他の地方の給与水準など推して知るべしといったところか。

現実はこんなものだが、昭和の夢の時代を忘れられないポンコツには理解できないだろう。

さて、この後は、『仕事が見つからなければ起業しろ』という効果のない妄言を検証してみる。

中小企業白書のデータによると、わが国では、年間平均で約6万社(個人事業者含む)が新規開業する一方で、約26万社が廃業する。

70年代後半には5.9%に達した開業率は、ここ数年は2%を割り込み1.4%にまで低下している。

一方、廃業率は70年代後半の3.5%から最近は6.1%と、開業率とは逆に増加している。

何かと華やかなイメージのあるバブル期でさえ開業率は3.5%、廃業率は4.0%と開廃業率が逆転していたのだから、15年以上のデフレ不況を経た現在の数値が冴えないのも無理はない。

因みに、1986年以降、企業数は一貫して減少しており、最近では年間3%程度の割合で減っている。

起業後の企業の生存率について、ネット上に流布するデータでは、1年目40%→5年目15~20%→10年目5~6%とかなり厳しい値だが、中小企業白書(2011年)のデータでは、1年目97%→5年目82%→10年目70%と大きく異なっている。

筆者の実感では、1年目70%→5年目50%→10年目35%といったところだが、これらは、あくまで企業が存続しているというだけのデータで、その中味にまで踏み込んだものではない。

企業として存続はしているが、赤字続きで毎年のようにリストラしたり、社長の個人資産で補てんしたりして何とか持ちこたえているような企業が殆どだ。

筆者の取引先にも、小規模な企業なら社長の年収が300万円以下、つまり、生活保護を受けた方がマシな企業がザラにある。(おまけに年中無休の状態)

日本政策金融公庫総合研究所の調査結果によると、起業者の年代は30歳代が40.2%と最も多く、次いで40歳代29.8%、50歳代15.5%、起業直前の職業は会社役員や正社員などが85%近くを占め、何らかの社会経験や業務経験を積んだ者が多い。

ズブの素人ではなく、経験や知見・人脈を相応に有した状態で起業する者が多いにもかかわらず、起業後の売り上げ状況に関する問いには、「増加傾向」との回答が26.7%しかなく、「横ばい」が54%、「減少傾向」が19.3%と売上を伸ばすという事業の初期段階で躓いているのが判る。

東京商工リサーチのデータによると、企業倒産の要因として最も多いのは「販売不振」で、全体の70%近くを占めており、ドラマの題材になりそうな「放漫経営」や「連鎖倒産」みたいな派手な倒産は、せいぜい5%程度に過ぎない。

売上の低迷という血液不足が、企業経営には最も堪えるという当たり前の結果が出ている。

売上を上げることこそが、事業の基本であるとともに事業の根幹を成すものなのだが、日本の名目GDPは2007年をピークに低下、あるいは、横這い状態で経過してきた以上、マクロ経済の一構成員に過ぎない企業、とりわけ事業基盤の脆弱な新規企業が売上を伸ばすことは極めて困難だっただろうことは想像に難くない。

「俺は寝る間も惜しんで働いたぞ、仕事が無いなんて言うやつは甘えてる」、「デフレ、デフレって言い訳する奴は怠け者、デフレでも成功している経営者はいくらでもいる」と嘯く経営者は多い。

だが、俺は成功できたんだから、他の奴も努力すれば成功できるはず、というのは自分勝手な妄想でしかない。

名目GDPが増えていないということは、日本という国全体の経済のパイが増えていないということだ。

経済のパイが頭打ちの状態で、新たな成功者が出現すれば、その分だけ自分のパイが奪われるだけだ。船の定員は決まっているのだから、新たな乗客を乗せようとすれば、誰かが下船しなければなるまい。

その“誰か”が自分になるかもしれないことに気付けない間抜けな経営者に限って、新たな乗客を招き入れようとするから、まさに失笑ものである。

ユニクロとかニトリを例に挙げて、デフレでも工夫次第で業績を伸ばせると強弁する者もいるが、そんなことは当たり前だ。

最下位のプロ野球チームにも3割バッターがいるし、ホームラン王だっているだろう。

個々人や個々の企業と全体の成績とは必ずしも連動しないくらい子供でも判る。

日本には1億2千万人もの国民がおり、400万社以上の企業がある。これだけあれば、業績の良い企業が10~20万社あっても何の不思議もない。

そんなごく一部の特殊な成功例を持ち出して、経済全体を語るなど全く無意味な行為で、何の説得力もない。

デフレ下でも成長している企業の多くは、他の国内企業のパイを奪って成長しているだけの寄生虫型企業が多い。

そんな例を真似しても、互いに傷つけ合うだけの不毛な争いに終始し、経済全体のパイは拡大しない。

“努力すれば成功できる”、“理に適ったマーケティングをすれば売上を伸ばせる”みたいな単純な成長思考は、昭和の時代には当てはまっても、マクロ経済の成長が止まった現代では通用しない。

自らが『時代遅れの昭和の価値観』に染まり切っていることに気付かない愚か者ほど、マクロ経済の成長が当たり前だった昭和時代を否定しようとするものだ。




(※)コメントをくださった皆様、ありがとうございます。

リフレ派の連中が、米FRB量的緩和終了に関してコメントを発しようとしないのを微笑ましく思っています。