うずらのブログ

積極的な財政金融政策による豊かで成長力に満ちた社会を目指します

危機感のない国民たち

今年4月の消費税増税後の経済指標は、相変わらず冴えない状況が続いている。

・8月の毎月勤労統計調査による現金給与総額平均値274,744円(前年同月比▲2.6%/実質値、14カ月連続のマイナス)
・8月の1世帯当たりの消費支出282,124円(前年同月比▲4.7%/実質値、5カ月連続のマイナス)
・8月の鉱工業生産指数95.5(前月比▲1.5%、2か月ぶりに前月を下回る)
・8月の新設住宅着工戸数73,771戸(前年同月比▲12.5%、6カ月連続のマイナス)
・2014年度上期(4~9月)国内新車販売台数247万台(前年同期比▲2.8%)
・9月の大手百貨店販売実績で5社のうち3社が販売減少(増収の2社も増税に伴う価格アップ分を除くと実質増収は1社のみ)

本格的な景気回復には程遠い状態で、税率や原材料等のコストアップが先行したのだから当然の結果とも言えるだろう。 少しだけ熱が下がった重篤患者に無理なトレーニングを課すようなもので、このままでは哀れな患者の集中治療室への逆戻りは避けられまい。

指標の中には、名目賃金の上昇を示すものもあり、アベノミクスの二本の矢(無論、第三の矢は除外)の成果の残滓を感じ取ることもできる。
だが、せっかくの景気回復の芽も、先の消費増税という悪手により掻き消されようとしている。リフレ派の連中の愚痴ではないが、まさに『消費税増税さえなければ…』といったところか。

だが、これだけの悪材料が表面化しても、与党や政権サイドの認識はボヤけたままだ。
景気悪化の言い訳こそ、「想定の範囲内」から「天候不順や猛暑の影響」へと変化したが、10%への再増税断行への決意に揺るぎはないようだ。

ここで、安倍政権が強弁する「天候不順や猛暑の影響」について簡単に確認してみたい。
まず、降雨の影響について、気象庁のデータから全国7都市(札幌、仙台、東京、名古屋、大阪、広島、福岡)の降雨日数を昨年と比較してみた。(今年と昨年の6~8月の合計値/7都市分)
・0ミリ以上の降雨日数合計 今年454日(昨年比+58日)
・1ミリ以上の降雨日数合計 今年253日(〃+61日)
・10ミリ以上の降雨日数合計 今年107日(〃+13日)
という結果で、確かに今年は雨の日が多かったようだ。
ただし、10ミリ以上降った日数は大した違いはなく、せいぜい1都市あたり1.8日くらい増えた程度にすぎない。

続いて、アメダスによる短時間豪雨発生回数を比較する。
気象庁には、全国の1時間降水量50ミリ(非常に激しい雨)、80ミリ以上(猛烈な雨)の発生回数のデータがある。
それによると、今年1~8月の発生回数は164回/50ミリ以上、10回/80ミリ以上あるそうだが、昨年1年間の発生回数(237回/50ミリ以上、25回/80ミリ以上)であり、経過した月数換算で比較すると、50ミリ以上で+6回、80ミリ以上で▲6回とさほど変わらない。

また、全国の台風接近数では、今年6~9月の9回に対して、昨年同期も9回と同数である。

ついでに、気温を比較してみると、さきほどと同様に全国7都市の合計値は次のようになる。
・30℃以上(真夏日)の合計 今年268日(昨年比▲56日)
・35℃以上(酷暑日)の合計 今年23日(〃▲83日)
という結果で、夏の初め頃には、バカマスコミが「今年は異常な暑さだ」と散々連呼していたが、ふたを開けてみると、気象庁の長期予報どおり今年は冷夏だったようだ。
総じて、今年の夏は弱めの雨の日が多かった(特に西日本で)ものの、比較的過ごしやすい気温で経過したと言えるだろう。

天候と消費の関係については、経産省の研究資料が発表されており、 (http://www.meti.go.jp/statistics/toppage/report/bunseki/pdf/h19/h4a0803j3.pdf)
“降水による消費減少の影響は被服及び履物で大”としているものの、これは、あくまで休日限定での話であり、平日では有為な差は現れていないと分析している。
また、気象要因の消費減少への寄与は最大でも月2,000円ほどに過ぎず、約3,000円にもなる理論値との差異を説明するに当たり、全ての原因を気象に帰するのは無理があるという趣旨の記載もある。
端的に言うと、天候不順が消費に与える影響はたかが知れている、ということだ。

仮に、景気が本格的に回復し、人々の消費マインドが好調な状態ならば、リフレ派のバカが大好きな「個別価格と相対価格の話」のように、多くの人は、雨で外食を取り止めても浮いたお金で宅配ピザを頼むだろう。
つまり、外で使わなかったお金を、別の何かに使うような行動が一般化するはずだ。
現時点でそういった動きが顕在化していないということは、天候云々ではなく、単に国民の所得が減っている、あるいは、期待したほど増えていないというだけのことだろう。

先日、国税庁から発表された平成25年分民間給与実態統計調査では、給与所得者数が4,645万人(前年比+2.0%)、平均給与は414万円(同+1.4%)と回復傾向が覗える。
しかし、これはあくまで、アベノミクスの第一と第二の矢の効果が発揮された昨年の実績であり、消費税が増税され、第三の矢が大手を振って歩き始めた今年の数字ではない。
調査内容を検証すると、正規雇用の平均給与は473万円と前年比で1.2%増えたが、一刻も早い待遇改善が求められる非正規雇用の平均給与は168万円(正規雇用の1/3くらいしかない!)と逆に0.1%減少している。
しかも、正規雇用の給与所得者数が3,056万人と前年比で1.5%増えたのに比べ、非正規雇用は1,040万人と5.3%も増えているにもかかわらず、一向に待遇改善が図られていない。
これでは、単に不安定な労働条件を強いられる層が増えただけで、何の解決にも至っていない。

また、給与階層別の人数を調べてみると、給与所得者全体の4%未満に過ぎない1,000万円超の高所得者層の数は昨年から13万人余り増えており、これは、給与所得者全体の増加数89万人の15%にも達する。
つまり、アベノミクス効果の初動段階では、メリットを享受できる層は一部の高所得者層に限定されており、待遇改善を急ぐべき層にまで浸透していないということだ。
にもかかわらず、消費税増税や原材料・食料・エネルギー価格の高騰による無差別の攻撃に曝され、多くの国民は財布の紐をきつく縛らざるを得なかったのだろう。

だが、こうした惨状に対する政府の危機感はゼロに等しい。
4-6期のみならず7-9期の経済指標も悪化の症状を示しており、駆け込み消費の反動減からのV字回復を夢想していた安倍政権は、まさに煮え湯を飲まされた気分だろう。

しかし、10月1日の経済財政諮問会議で、来年度の予算編成にあたり、公共投資の絞り込みや社会保障の効率化を改めて確認するなど財政健全化色の強い方向性を打ち出すなど、煮え湯どころか、ここ最近の経済指標の悪化などどこ吹く風かと、何の痛痒も感じていないようだ。

いくら景気にブレーキが掛かっても、いまのところ安倍政権は10%への再増税を諦める気配はない。
今回の臨時国会で来年度の政策の目玉として打ち出そうとしている「地方創生交付金」(5年間で1兆円といわれている)で、厳しい現状を変えられると踏んでいるようだ。
たかが年間2,000億円程度の追加予算、しかも、その原資は他の既存予算からの振り替えで賄おうとしているようなチンケな施策で、再増税による巨大な負のインパクトを打ち消そうというのだから片腹痛い。
恐らく、各省庁は、事業効果が出ずに苦労している既存予算の延命のために、何とか屁理屈を付けて地方再生枠に叩きこもうと必死になるだろうが、霞が関界隈の小さなコップの中の縄張り争いなどどうでもよいことだ。

安倍首相は、先の衆院本会議での所信表明演説で、『「ふるさと名物」を、全国区の人気商品へと押し上げる支援を、さらに強化いたします。地域ならではの資源を生かした、新たな「ふるさと名物」の商品化、販路開拓の努力を後押ししてまいります。』と地域振興への配慮をのぞかせた。
地方創生プランの目玉事業の一つでもある「ふるさと名物応援事業(経産省)」は、“中小企業、小規模事業者が行う「ふるさと名物」等の開発、地域ブランド力を高める取組、着地型観光の取組、海外展開等を支援”する事業だそうだが、こんなものは何の新鮮味もなく、10年以上前から繰り返してきた既存事業(新連携事業・農商工連携事業・地域資源活用事業ほか)の看板の付け替えに過ぎない。
経産官僚のアイディアなどこの程度のものなのか、と呆れるばかりだ。

どうせ、事業の中味も、地域の資源や余りもの(食物残渣や廃棄物)を使って、誰も買わないようなくだらない商品開発を後押しするようなあくびが止まらぬ内容だろう。
得てして、この手の補助金は、営業経費や生産設備の購入費は補助対象と認められないが、省庁に提出する書類は膨大な量になるなど、中小企業や小規模事業者にとって非常に使い勝手の良くないもので、人的ゆとりに乏しい地方の中小企業には極めて荷が重く、初年度から予算枠を大幅に余すことになるだろう。

くだらぬ構造改革騒ぎに端を発する長い停滞から、再び歩を前に進め始めた日本丸は、第三の矢や消費税増税という嵐によりエンジンに大きな損傷を負ったようだ。
しかし、艦橋にいる間抜けな司令部の連中は、修理代を惜しんで故障を認めようとせず、実際に船を動かす機関士や操舵手、甲板員をリストラしながら、猛烈な嵐が待ち受ける海峡に突っ込もうとしている。

このままでは、日本丸の難破は避けられまいが、肝心の乗客は実にのんびりしたもので、いまだに司令部や艦長の手腕に期待しているバカ者が多いようだ。

彼らが現実に目覚めるのは、恐らく、冷たい海の中に放り出された時だろう。



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