うずらのブログ

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根拠のない過信が身を亡ぼす

イギリスで沸き起こっているスコットランド独立騒動も、今月18日に予定されている住民投票の結果をもって一定の決着を得ることになる。

スコットランドグレートブリテン島の北部三分の一を占め、元々、スコット人の王朝として独立していたが、南接するイングランドとの抗争を経て1707年にイングランドと合併(実態は吸収)した背景もあり、独立の機運は300年もの間燻ぶってきてはいた。

独立の賛否は3:5くらいの割合で反対派が長らく優勢を保ってきたこともあり、独立問題は一種のイベント的(恒例行事の一つ)なノリで扱われ、近年まで現実的な問題として認識されることはなかった。

だが、今年に入り、急速に賛否の割合が接近し、ついに前回の世論調査では賛成派が51%と反対派を上回り(その後の最新の調査では反対派が52%と再逆転)、予断を許さない状況になっている。

独立問題が急速に現実味を帯びる中で、キャメロン首相をはじめ与野党の党首が現地入りして独立反対を強く訴えたほか、オズボーン財務相も急遽G20を欠席して対応に追われ、財界でもスコットランドに拠点を置く100社以上の首脳が、石油大手のロイヤル・ ダッチ・シェル 、郵便事業のロイヤル・メール 、石油探査企業ケアン・エナジーに独立反対への賛同を呼びかけるなど、まさに政財界を揚げて大騒ぎの様相だ。

また、ミック・ジャガーデヴィッド・ギルモア、ブライアン・フェリー、スティング、J・Kローリング、スティーブン・ホーキングらの著名人が独立反対の立場からメッセージを発している。

こういった強力な独立反対運動を経てもなお賛否が拮抗しているあたりに、独立賛成派の強烈な勢いやエネルギーを感じることができる。

スコットランドは、イギリス国土の約30%、GDPの約8%を占め、人口規模は530万人。 日本でいえば、面積や人口は北海道、GDPは九州あたりと似たイメージだろう。

独立後は、北海油田からの収益が主要な収入源になると見込まれているが、イギリスからどの程度の権益を分捕ることができるのかは不透明だ。

当面、通貨はポンドを使用し、イギリス王室を共通の元首とする方針だが、国家の大権たる通貨をイギリスに依存せざるを得ない(イギリス中央銀行はポンドの使用に否定的だが…)ようでは、独立後の歩みは相当厳しいものになると思われる。

スコットランド自体は親EU派とも言われており、独立後のEU加盟やユーロ使用も視野に入れているようだが、スペインのカタルーニャ独立運動への飛び火を懸念するもあり、EUのバローゾ欧州委員長はスコットランドのEU加盟に否定的な態度を取っている。

筆者も個人的には、スコットランドの独立は、イギリスにもスコットランド自身にも悪い結果しかもたらさないと思う。

経済的な伸びしろの少ない両国が分裂しても規模の優位性を失うだけで何ら得るものはない。将来的に北極海航路が開通した際の地理的優位性を巡って両国間に火種を抱える要因にもなりうる。

また、スコットランド独立という結果は、常任理事国の一角を占めるイギリスの国力低下を間違いなくもたらすだろうし、ひいてはそれが欧州全体の結束に楔を打ち込みかねない事態を招来し、欧露のパワーバランスに深刻な影響を及ぼしかねない。

18日の住民投票の結果は予断を許さないが、独立賛成派が僅差で勝利するのではないかと予測する。

こういった問題は、周囲の反対運動が苛烈になるほど関係者は冷静な判断力を失いがちになり、簡単な損得勘定すらできなくなるものだ。

スコットランド地方を含むイギリス国民も、他の先進国と同様に、新自由主義的な政策がもたらすどんよりと停滞した空気にうんざりしていることだろう。

こうした、重苦しさに辟易とした国民や住民は、得てして、現実よりもまだ見ぬイベントに興味を惹かれがちになる。たとえそれが高いリスクを孕んでいたとしても、退屈な日常を続けるより、危険なゲームに身を投じたくなるものだ。

史上初の女性大統領や黒人初の大統領の誕生を期待する気持と同じように、結果の是非よりも歴史的なイベントが起きる瞬間を体験したいという欲求が勝ってしまえば、意外にあっさりと独立が承認されることになるだろう。

このスコットランドの独立問題を受けて、日本国内でも、いかがわしい評論家の3バカトリオ(大前研一日下公人榊原英資)が偉そうに九州独立論や北海道独立論を語り始めるであろうことは想像に難くない。

タチの悪い評論家の連中は、「アジアの金融センター」、「アジアとの地理的条件」、「日本の食糧庫」、「アジア・オセアニアを魅了する観光資源」とか何とか持ち上げて、これからは世界に目を向けろとばかりに無責任な地域独立論を展開するだろう。

しかし、こういった無責任な地域独立論は、一見、地域のポテンシャルを持ち上げているようで、その根底には、中央のお荷物になる僻地を切り離したいという強い願望が隠されている。

海外で特定地域の独立運動が起きる要因として、民族や宗教的な対立に加え、こうした中央対地域の経済格差が挙げられる。

疲弊した地域への経済的援助を重荷に感じる都市部(中央)の住民からの不満が高まり、それが新自由主義的な構造改革や緊縮的思考と呼応して地域への経済配分を縮小させ、今度は地方が不満を募らせて地域対立が勃発するという構図をもたらすのだ。

だが、これからは、地方が中央に反発する形での独立というお馴染みのパターンではなく、中央が地方というお荷物を切り離すという形での独立もあり得るのではないか。

机上の空論しか言えない評論家が、無責任に地域の独立を促すのではなく、強力な経済基盤を持つ中央(首都)が地方というお荷物を切り離して自ら独立することがあってもよい。

九州や北海道のような僻地ではなく、日本からの東京独立論である。

ニューヨーク大都市圏の1.4倍もの経済規模を誇る大東京圏は、世界第2位のムンバイ都市圏に1,000万人以上の差をつける人口集積を誇り、そのGDPは日本全体の20%近くに達し、国単位で換算しても世界で14位前後とメキシコや韓国を上回りオーストラリア並みの経済規模を有している。

そんな東京に寄生する政財官や知識層の連中は、常に地方を中央にたかるお荷物扱いし、地方に税や富を配分するのは怠け者に小遣いを与えるのに等しいくらいの感覚でモノを語ってきた。

東京は、江戸幕府開府以降400年以上の長きに亘り日本の首都として、官民問わず莫大な量の投資が行われてきた。

そのおかげもあって、いまでは東京都だけで1,300万人、大東京圏という括りなら3,400~3,700万人もの人口規模を抱え、国の行政・立法機能のほぼすべてを保有するほか、国内の上場企業の50%近く(関東地域でカウントすると60%近く、2位の大阪は12%前後)が集中している。

これなら、鼻をほじりながら欠伸をしていても、富や人が向こうから勝手に入ってこようというもので、何の苦労もない。 

そんな場所で日がな過ごしておれば、デフレだ不況だと愚痴をこぼす地方の連中がだらしなく映ってしまうのだろう。

関東圏が日本のすべてだと勘違いしている都民の大半は、“公共事業だ?俺たちが稼いだ金(税金)であいつらを養ってやってるのに、まだ足りないのかっ、この怠け者がっ!!”くらいのことは思っているだろう。

なら、東京こそ独立すればよい。

カネ喰い虫でお荷物なだけの地方を切り捨てれば、さぞや身軽になれるだろうし、私たちの税金とやらも自分たちのために使えるようになる。

新幹線も空港も高速道路網もあり(ディズニーランドは海外になってしまうが…)基本的なインフラに不足はあるまい。

東京都の製造業の出荷額は約8兆円と全国シェアの3%を占めているが、意外なことに、ピーク時の1990年と比べて40%未満の水準に落ち込んでいる。特に23区内は30%未満にまで急激な落ち込みを見せている。

バブル崩壊後の強烈なデフレ不況に見舞われた中小規模の企業が、国内他所と比較した人件費や地価の高さから地方や海外への流出を余儀なくされたものと推察されるが、製造業出荷額の業種別割合でも、ネット化や電子化との競合で付加価値の低下が課題になっている印刷業がトップ(約16%)を占めているなど産業構造の足許は意外に脆い。

この他にも、他の道府県からの人口流入によって人口増加を維持してきたものの、出生率は1.0~1.1と全国最下位を独走し、近い将来には少子高齢化待ったなしの状態にある。

だが、土地の狭さや地価の高さにより都内に特養施設が立てられず、杉並区ではやむなく伊豆半島に特養ホームを立てざるを得なくなるなどという問題も発生している。

大した生産力もなく消費するだけしか能がない東京は、食糧やエネルギー、工業製品の原材料などほぼすべての品目を他所からの輸入に頼らざるを得ないため、いざ独立となれば大幅な輸入超過を余儀なくされ、多額の貿易赤字を抱えることになるだろう。

己の富の源泉が何処にあるのかを理解しようとしない愚か者は、根拠のない自信の上に胡坐をかき、過剰な自己肯定の末に身を亡ぼすことになる。