うずらのブログ

積極的な財政金融政策による豊かで成長力に満ちた社会を目指します

再びデフレスパイラルへ

今週の26日から政府による消費税増税の集中点検会合が始まった。会合では、6日間で60人の有識者から、来年4月に予定される消費税増税に関するヒアリングが行われているが、そもそも、選ばれた「有識者」には、業界ごとの重複が目立つばかりか、増税容認派や賛成派が多数を占めており、“増税止むなし、あるいは、断行すべし”の大合唱になることは目に見えている。

 

現に、29(5回会合終了)時点で、出席者42人のうち、賛成26人、条件付き賛成6人、引上げ幅見直し条件付き容認4(毎年1%ずつの引上げならOK)、反対5人、その他1(政府にお任せ)という内訳で、広義の引上げ賛成・容認が88%もいるのに対して、明確な反対意見はたったの12%に止まった。会合自体はあと2回開催されるが、出席者には増税強硬派の御大が数多く控えており、反対派の割合はさらなる縮小が確実視されている。

 

この結果は、マスコミの世論調査結果とは相当乖離している印象だが、元々賛成・容認派が中心のメンバー構成であり、反対意見が1割程度に止まるという結果自体は驚くに当たらない。こういったメンバー構成にし、有識者の御意見という錦の御旗を盾に増税をゴリ押ししようとする政府の強い意志が改めて確認できたというにすぎない。

 

会合に出席したメンバーのうち、経団連経済同友会、証券系のポチエコノミスト、大学教授辺りの世間知らずのバカはともかく、消費税増税による負の影響をまともに被るであろう労働界や消費者団体、不動産業界、自動車業界、建設業界、漁業者団体、農業団体、観光業界、中小企業団体等の代表者(一部を除く)の口から、次々の増税を容認する意見が出されたことに暗澹たる思いがする。

 

彼らも業界代表とはいえ、社会的には功成り名を遂げた立場(叩き上げではなく天下りも多い)にあり、一般の労働者や消費者とは、また違った感覚の持ち主で、消費税増税による苦境など所詮他人事だと高みの見物をできる立場なのだろう。

会合の意見をまとめると、次のようになる。

・将来世代へのツケの先送りをしない

・財政健全化のため

社会保障財源確保に必要

増税回避は日本の国際的な信用を棄損し株・債券・通貨のトリプル安を招く

増税延期により長期金利が上昇すれば市場の混乱を招く

増税により若者と高齢者との世代間格差を埋める

・持続的な経済成長には増税が必要

増税しても住宅購入の落ち込みは限定的だ

・地元の建設業者も賛成が多い

・金融機関の不良債権問題があった前回(97)増税時とは経済情勢が違う

また、増税容認の条件として、次のような意見もある。

低所得者対策や国会議員定数削減が必要

・若者や少子化対策が必要

法人税減税等の景気下支え策が必要

非正規労働者社会保険適用拡大が必要

増税分は待機児童をゼロにする財源に充てるべき

・車体課税の抜本的な見直しが必要

・地方向けの対策を万全にし、農水産物に軽減財率を適用して欲しい

まるで、緊縮財政論者か構造改革主義者の戯言を復唱されているかのようだが、出席者の多くを構造改革的思考の殉教者が占める以上、当然の結果とも言える。

 

既に何度も主張してきたとおり、筆者は、大規模かつ長期に亘る財政金融政策の実行によりデフレを脱却させ、経済の巡航的な成長や拡大を実現していく過程で、社会保障やインフラ整備、教育、科学・技術、食料、防災、治安、防衛等の日本を支える社会基盤の整備や強化を図るべきという立場である。つまり、社会に横たわる諸問題の多くを「経済成長による国富」の強化により解決する、あるいは、解決の糸口を付けるべきと主張してきた。

 

消費税とは、所得や社会的立場の高低に関わりなく、消費行動という社会生活を送るうえで避けて通れない行為に課税する強制性や逆進性の強い不公正な税制である。(その分インフレ対策としては極めて有効な税制)

 

今回の会合で賛成・容認派から出された「財政健全化」とか「将来世代へのツケ送り」、「社会保障財源の確保」という意見は、正当な経済評論家や学者から過去に何度も論破された古臭いものだ。消費税増税が家計や企業の消費意欲を委縮させるものだという一般的な皮膚感覚から、また、橋本政権による97年の消費税増税構造改革行財政改革の合わせ技が見事にデフレ突入の起点となった事実(小泉のバカがそれを深刻化させたのだが…)を踏まえても、デフレの闇から明けきらぬ日本経済に消費税増税という過酷な嵐を呼び込めば、再度デフレは深刻化し、名目GDPの縮小に起因する税収減少によって、財政は健全化されず、社会保障の財源も確保できず、結果として将来世代へのツケが更に膨らむことにしかならないだろう。

 

また、増税見送りが株・債券・通貨のトリプル安を招くと言うが、財政問題(筆者に言わせればただの嘘)30年も前から指摘されており、とっくの昔にトリプル安になっているはずだが、現実は迷惑なほどの債券高・通貨高に悩まされている。

 

このほか、増税は世代間格差を埋めるとか持続的な経済成長に欠かせないとかいった類の愚見には、開いた口が塞がらない。叩けば叩くほど傷の治りが良くなると唱える邪教の信者かと見紛う愚かさで、こういう連中が新興宗教に騙されてシャクティパットとかに嵌るのだろう。

 

増税を条件付きで認める意見の中には、自動車税法人税の引下げ、一部商品への軽減税率適用といった自己都合丸出しの意見や低所得者対策・若者対策・少子化対策との抱き合わせといった愚にもつかない対応策を求める意見があるが、消費税増税を見送ること、あるいは減税や廃止にまで踏み込んで実質的な財政政策を打つことこそが何よりの対策なのだ。

 

わざわざ厄災を呼び込み対策に四苦八苦する(TPP問題にも同じことが言える)よりも、始めからそれを避ければ良いだけなのだが、「有識者」とされる連中には、このレベルの簡単な理屈さえ理解できないようだ。

 

政府がこれだけ大規模な“ショー”を催す以上、消費増税に向けたレールは既に敷かれたものと受け止める。

だが、バブル崩壊後に曲りなりにも経済対策が打たれた前回(97)と違い、失われた15年の間にすっかり体力が落ちた今回は、増税に対する社会の耐性が脆弱化していることを忘れてはならない。しかも、今回は5%8%10%と税率の引上げ幅も大きく、経済に与えるインパクトは格段に大きい。

このまま、黙って増税を見過ごしてしまえば、日本の失われた15年は第二弾の幕開けを迎え、経済困窮による自殺者や企業倒産による離職者の増加という悲劇が再生産されることだろう。

 

(追記)

消費税増税と並び頭の痛い問題であるTPP交渉について、ブルネイで行われている会合で、国有企業と民間企業の競争条件についての議論が始まり、日本郵政JT等の国有企業の事業への影響が危惧されている。

安倍政権の対外交渉力に絶対的な信頼を寄せる信仰心の厚い一部のファンの方々の期待は大きく裏切られ、最終的にはアメリカの我が儘に付き合わされた挙句に妥協を重ねて国益を損なう結果に終わることだろう。

また、自民党内部に数多くいるとされるTPP反対派議員も、党内論議というガス抜きの場を与えられるだけで、結局は内閣の意向に逆らえず、その愚行を追認することになるだろう。なぜなら、所詮はサラリーマン議員である彼らにとっては国益よりも党議拘束の方が重い意味を持つからだ。

筆者としては、TPP交渉に連なる国内市場開放要求が、JPJT等の国有企業だけでなく、ゆくゆくは国営企業である日本銀行にまで及びかねないと余計な心配をしている。