うずらのブログ

積極的な財政金融政策による豊かで成長力に満ちた社会を目指します

二つのニュース

さる212日に、経済3団体のトップとの会合に出席した安倍首相は、会合の席上で「頑張って働く人の所得増大によって、本格的なデフレ脱却に向かっていく」と賃上げを要請した。会合に先立つ国会の質疑の場で、企業へ賃上げを要請するつもりだと発言していたが、これほど正面切ってストレートに要請するとは思っていなかったため、筆者も少なからず驚かされた。

こうした首相の姿勢に対して、「どうせ、ポーズだけだ」とか「まだまだ企業の経営も厳しいのに、賃上げなんて無理に決まってるだろっ」、「まるで労組の代表みたいだ、みっともない」などと冷めた眼で批判する者も多い。

しかし、筆者の見方は違う。今回の安倍首相の行動の意義は大変大きいと感嘆している。

与党、それも保守系議員色の強かった首相が、労働者の賃上げのために、財界に(形式上)頭を下げるという前代未聞の行動に出た、それも、何ら気負った様子も見せず、デフレ脱却という大義に立脚する形で、あくまで自然に振る舞っていたのがとても印象的であった。

前政権の民主党は、支持層の多くを労組系団体が占めるにもかかわらず、こうした目に見える努力を一切してこなかったのと大違いだ。

今回の首相の行動をきっかけに、労働分配率が一気に高まるわけではない。しかし、ローソンや仙台厚生病院のように社員の賃上げや一時金引き上げに乗り出す企業もある。こうした動きをマスコミが良い意味で騒ぎ立てて誌面や映像で大いに採り上げれば、社会的に大きなうねりが生成されて、必ず賃上げに追随しようとする企業が現れるものだ。

企業の賃上げモードは、現段階では小さな芽に過ぎないが、ちょっと前までは、ホワイトカラーエグゼンプションとか40歳定年制導入などという、まことにくだらない労働条件切り下げ政策をチラつかされて脅かされ続けてきたことを思えば、隔世の感がある。

 

もうひとつ驚かされたニュースがある。それは、昨日配信された“中小企業融資における個人保証の廃止を検討”というニュースである。

これは、銀行や貸金業者が中小企業などに融資する際に求めてきた個人保証について、法制審議会が原則として認めないとする民法改正案を本格的に検討する、というもので、経営者以外のいわゆる第三者保証を廃するというものだ。

以前のエントリーでも述べたように、筆者も融資に係る個人保証は、一定額(原則300500万円程度を上限に)を除き廃止すべきとの立場だ。

一般的に、まじめ(標準レベルの)な経営者であれば、経営する企業の業績が傾き始めると、何とか持ちこたえようと限界まで私財を投入してしまうケースが多い。(中には、中国の腐った高官のように財産隠しに勤しむバカ者もいるが…)

そうなってしまえば、倒産後に保証債務を請求しても、ほとんど資力は残っておらず、自己破産への道を辿るしかない。

法制審議会の答申内容のとおり、第三者保証は多くの悲劇を生む。大抵、知人の社長に無理やり頼まれて債務保証を引き受けたはよいが、保証先企業の経営状況や債務返済状況を知らされることもなく、ある日突然、銀行から保証債務履行を求める内容証明が届き、心臓が止まる思いをする者も多いだろう。銀行の担当者とて、突然の不幸に見舞われた保証人相手に返済交渉をするのは大変な心労を伴う(悪魔呼ばわりされるのがオチだ)もので、何とか避けたいのが本音だろう。

所詮、中小企業の経営者や第三者(兄弟、親戚、取引先の社長など)の資力などたかが知れており、債務回収に大きな期待はできないものだ。

であれば、保証人と銀行との無用なバトルを端から避ける仕組みへの転換が必要だと思う。資金の出し手と借り手双方にメリットのある保証額上限付き(もしくは無保証)の中金利融資をもっと普及させることが重要だろう。

 

今回採り上げた二つの話題は、安倍政権が放つ2本の矢(財政政策と金融政策)を、より正確にターゲットに射立てるための素地になりうるものであり、一日も早く具体化することを期待したい。