うずらのブログ

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売上なくして、再生なし

すでに新聞や業界紙、週刊誌などで度々採り上げられているが、中小企業金融円滑化法が来年3月末に適用期限切れを迎える。

【中小企業金融円滑化法とは】

《「中小企業者等に対する金融の円滑化を図るための臨時措置に関する法律」の通称》

中小企業や住宅ローンの借り手が金融機関に返済負担の軽減を申し入れた際に、できる限り貸付条件の変更等を行うよう努めることなどを内容とする法律。

平成20年秋以降の金融危機・景気低迷による中小企業の資金繰り悪化等への対応策として、平成2112月に約2年間の時限立法として施行。

期限を迎えても中小企業の業況・資金繰りは依然として厳しいことから、平成253月末まで延長された。(デジタル大辞泉より)

 

詳しくは上記を参照願いたいが、この法律の趣旨は①売上低迷②収益低迷③過剰債務に苦しむ中小企業の資金繰りを支援するために、金融機関からの借入の返済条件を一定期間緩和するものである。その多くは、元金返済の猶予(利払いは継続)だが、返済期間の延長や旧債務の借り換え、債務の株式化などの手法もある。

 

金融円滑化法の施行状況(H24/9)は、中小企業向けで申込が369万件、うち実行件数343万件(実行率92%)、住宅ローン向けで申込28万件、うち実行件数23万件(実行率80%)に達しており、中小企業にはかなり浸透している制度と言えるだろう。

特に、中小企業向けの実行率(返済条件緩和応諾率)は、当初こそ40%程度に過ぎなかったが、その後7割→8割へと高まり、昨年6月以降は常に9割を超えている。

金融庁の肝煎りで始まった法律とはいえ、中小企業に対して、まさに大盤振る舞いの対応だと言えよう。バブル崩壊直後に、金融機関の大甘な貸出態度を厳しく非難していた当時の金融庁とは大違いだ。

 

かように多くの中小企業の資金繰り延命に効果を発してきた金融円滑化法も、いよいよ残り3カ月程でタイムリミットを迎えることになる。ここにきて、金融機関や行政機関も、法律適用期限切れ後の対応を巡って危機感を募らせているようだ。

 

帝国データバンクによる「金融円滑化法に関する金融機関アンケート調査(2012/12/10);全国516の金融機関を対象とした調査(回答数359機関)」によると、金融円滑化法終了後に再度の条件変更の申込みがあった場合に、応じると見込まれる企業の割合は80%を上回るとの回答が約6割に達し、堤防が一気に決壊するような大混乱はない模様だが、「把握していない」との回答も2割近くあり不確定要素は多い。

また、金融円滑化法適用に際して企業から金融機関に提出される改善計画目標を達成している企業の割合は、「20%以下」が21.5%、「21~40%」が30.7%と改善計画の達成割合が40%以下という回答が6割強を占め、「把握していない」との回答も17.5%もある。

金融円滑化法終了後の企業倒産動向に対する回答も、「やや増加する58.2%」、「大幅に増加する1.7%」と6割近くの金融機関が倒産の増加を見込んでいるが、一方で減少を見込む回答は(当たり前だが)ゼロであった。

法律適用の期限切れが眼前に迫り、再度の返済条件緩和に応じる割合が過半に上るものの、支援先企業の経営改善状況は思わしくなく、来年4月以降の倒産増加は免れないという悲観的な見方が強いようだ。

 

アメリカでは年末がタイムリミットの「財政の崖」が問題視されている(共和党やティーパーティのバカが妥協すれば済む話だが…)が、国内では、この「円滑化法終了の崖」が今後大きな経済問題になろう。

この問題は、全国の中小企業、金融庁経済産業省都道府県庁、金融機関、信用保証協会、再生支援協議会など非常に広範かつ多岐に亘る企業や機関に大激震をもたらしかねない深刻な問題にもかかわらず抜本的な対策は取られて来なかったが、これほどの大問題を放置してきた民主党政権の無能さに呆れるばかりだ。

 

法の適用を受けた企業は、デフレ不況の中で売上低迷・価格競争による収益低迷・過剰な金融債務の三重苦に苦しめられ経営改善の糸口さえ掴めずにいる。

金融機関は、融資先企業の経営改善に有効なアドバイ(デフレ下ではそもそも不可能なのだが…)すらできず、倒産リスクに備えて貸倒引当金を積むことしかできない。

行政機関等は、専門家による相談対応とか制度融資の拡充(金融債務を増やすだけ)といった靴の上から足を掻くような役にも立たない施策しか打ち出せず、来年3月末のタイムリミットが到来するのを怯えながら傍観している。

 

金融円滑化法の適用を受ける企業は、金融機関に経営改善計画(事業再生計画)を提出するのだが、その内容は、事業概況、業績悪化原因、経営改善に向けた努力目標の項目に大別され、これに今後数年先までの収支計画や借入返済計画を追加したものになる。

いわば事業再生に向けた事業計画なのだが、すべての計画数値の源泉は、いかに「売上」を確保できるかにかかっている。

 

中小企業、とくに経営規模の小さな企業であれば、カットできる経費などたかが知れている。

社員の人件費や役員報酬、交際費などとっくに削っているし、バカな反原発運動のせいで光熱費などエネルギーコストは上がる一方だ。原材料のロス低減や生産効率化に着手することも必要だが、一朝一夕に効果が出るものではない。

企業が必要な収益を確保するには、どうしても一定レベル以上の「売上」を確保することが避けられない。

 

企業決算で使われる損益計算書の天辺にある売上高から各種の支出や経費を差し引いた残りが「利益(減価償却)」であり、それが金融債務の返済原資となる。元々、中小企業の多くは、必要な経費を差し引いた後に利益がほとんど残らない、もしくは赤字になってしまう企業ばかりなのだから、漏斗の口から注ぎ込む水の量(=売上)が増えなければ、コストカットの余地すら生じることがなく、事業の再生などあり得ない。

実際に、法の適用を受けた企業の口から、“一時的に借入返済を猶予してもらったが、抜本的な経営改善にはつながらない”、“返済負担を軽減されても業績が回復せず負債が拡大するばかりだ”といった声をよく聞く。

法の適用を受けても、借入の元金返済を一定期間猶予してもらえるだけで返済義務がなくなるわけではない(返済する時期を先送りするだけ)から、返済猶予期間中に業績を回復させなければ改善計画などたちまち吹っ飛んでしまう。

 

平成23年に金融円滑化法が現在の期限まで延長された背景には、デフレ脱却の兆しすらない当時の経済環境下では中小企業の経営の回復が到底見込めないという判断があったはずだ。

であれば、来年3月末に設定した延長期限も2-3年再延期するほかなかろう。

なぜなら、現状の景況判断は、間違いなく平成23年当時と比べて落ち込んでいるうえに、昨日の選挙で経済成長を掲げる自公政権の樹立が確実になったとはいえ、これから行われる経済対策の効果が実体経済に波及するのには、どうしても年単位の期間が必要になるからだ。

 

巷には、デフレに苛まれもがき苦しむ中小企業を尻目に、「いつまで国に頼るのか」、「同法は実質的にゾンビ企業を延命させ日本の成長を妨げている規制の一つだ」、「退場すべき企業の延命を図ることなく将来の成長分野にリソースを集中させるべき」といったバカげた非難をする論者もいる。

だが、その手の愚か者が、経済を聞きかじった中学生レベルの幼稚な意見を軽々しく吐き散らすのは、実体経済を俯瞰する習慣がないからだろう。

 

東京商工リサーチのデータ(国内410金融機関)では、平成243月末時点の金融円滑化法実行債権額は中小企業向けで82兆円、住宅ローン向けで3兆円 合計85兆円にも達する。例えば、このうち2割が再度の条件変更を謝絶されると、約17兆円が不良債権化することになり、金融機関の業績に大きな負のインパクトをもたらすことになる。

加えて、ニューマネーの供給を断たれた10-20万社もの企業倒産が見込まれ、関連する企業倒産や売上債権の焦付きなど、デフレ悪化にさらなる拍車をかけかねない極めて緊迫した事態が予想される。

この倒産の連鎖によるデフレの津波は日本経済に壊滅的な厄災をもたらしかねず、訳知り顔の識者のように“ゾンビ企業狩り”を楽しめるような状態ではない。

 

新政府が採るべき喫緊の処置として、金融円滑化法の2-3年の再延長や強力かつ長期的な財政金融政策の実行による実体経済への梃入れが欠かせないのは言うまでもない。

大規模な経済対策により、国内の中小企業に「売上」という燃料を投下し、業績回復の歯車を回してあげる必要がある。企業に業績回復を実感させ、将来に向けた投資や雇用に自信を持たせることが何より重要だ。

 

むろん、その間は、無駄な公共事業、産業構造の転換、成長戦略、規制緩和、雇用の流動化、構造改革、入札制度の透明化、グローバル化、外需の取り込み、脱原発どの寝言や妄言は禁句である。