うずらのブログ

積極的な財政金融政策による豊かで成長力に満ちた社会を目指します

無担保・無保証融資・中金利がこれからの融資の基本

 新聞等ではほとんど話題に上らないが、中小企業や小規模企業向けの融資に際して、従来型の不動産担保や保証人への依存を減らそうとする動きが活発化している。

 世間一般では、金融機関が企業に対して融資する際に、事業計画や経営者の資質などほとんど考慮せずに、不動産担保や保証人の資力しか見ていないという誤解が浸透している。

 確かに、昭和後期からバブル期にかけて行われた一部の融資、特に不動産絡みの投融資案件やいかがわしいゴルフ会員権融資、有担保のフリーローンなどについてはご指摘のとおりと言うしかない。そういった融資案件には、たいてい暴力団や不動産屋、土建屋など世間体の悪い人間が絡んでいるものだから、余計に融資=不動産依存という悪いイメージが増幅されて、世間に広まって行ったのだろう。

 金融機関を金貸しとか雨降りに傘を貸さないなどと罵倒する多くの人々も、実際に融資の担当者として現場に立てば判ると思うが、融資の稟議書を上司に上げる際に、“不動産担保力OK、保証人資力OK=融資実行”などと記載してしまえば、間違いなく差し戻しを喰らうだろう。

 実際に融資の現場においては、財務分析は当然のこととして、事業計画や資金計画の妥当性や業界動向、既往の金融機関との取引実績、融資先企業の役員・役員の家族・社員を含めた総合的な取引実績と今後得られる取引メリット等を総合的に勘案したうえで、担保余力や保証余力を加味して決裁されることになる。

 ただし、金融機関といえども、業界動向や個別の製品・商品、事業そのものを評価できるスキルに長けている訳ではなく、その辺りが融資先企業との認識に大きなギャップがあるのが現実で、同時に揉めるポイントでもある。

 こういった点は、融資を希望する企業が最も通暁しているはずであり、金融機関の担当者が理解できるよう具体的かつ噛んで含むように説明すべきなのだが、これができる経営者はごく僅かである。たいていの経営者は、頑張って夢を追う自分の計画を理解できないのがおかしい、といった田舎の農協や商工会の青年部のような態度を取るもので、こんなことでは融資担当者との溝はなかなか埋まらない。

 冒頭の話に関して、現在、経済産業省中小企業庁を中心に、中小企業、中でも小規模企業への政策的な配慮もあり、不動産担保や保証人に過度に依存しない資金調達が行えるよう法や制度を整備する動きがある。

 これは、平成22年に定められた「中小企業憲章」や今月22日に中小企業庁からとりまとめ結果が公表された「ちいさな企業未来会議」において、事業承継や金融の円滑化を進めるに当たり、不動産担保や保証人問題が中小企業にとって大きな障害になっているとの報告を受けてのものである。

 中小企業憲章においては、「3.行動指針 六.中小企業向けの金融を円滑化する」の項で、“不況、災害などから中小企業を守り、また、経営革新や技術開発などを促すための政策金融や、起業、転業、新事業展開などのための資金供給を充実する。金融供与に当たっては、中小企業の知的資産を始め事業力や経営者の資質を重視し、不動産担保や保証人への依存を減らす。そのためにも、中小企業の実態に則した会計制度を整え、経営状況の明確化、経営者自身による事業の説明能力の向上、資金調達力の強化を促す。 ”と定められた。

 また、ちいさな企業未来会議のとりまとめ報告書では、“(b)より円滑な資金調達を可能とするため、資金調達手段の多様化や従来型の不動産担保以外にも担保手段を拡充する観点から、電子記録債権の活用やABL(動産・債権担保融資)の促進について、実務家を含めた関係者間で協議し、必要となる制度・環境整備を進める。”、“(c)また、個人保証に過度に依存しない融資の推進のため、一定の要件の下で経営者本人の保証を猶予する手法や再生局面における個人保証の整理方法など、個人保証のあり方についても、これまで果たしてきた役割を検証しつつ、見直しを行う。”との記載があり、不動産担保や経営者の個人保証依存型融資からの転換を謳っている。

 筆者も、不動産担保や個人保証の徴求型融資からの脱却という点に関しては賛成する。

 不動産担保については、バブル崩壊後の不動産市況の続落的低迷や地方都市で広がる空き店舗、個人の持ち家信仰の崩壊などといった要因もあり、実際に担保として用をなす(=売却が可能な)物件は大都市圏をはじめ一部の地域にしか存在せず、担保としての価値を実質的に失っている物が多いのが実情だ。また、金融庁や日銀の検査、金融機関の自己査定時の不動産評価見直し作業など担当者の事務作業や事務コストは膨大な量になる。

 ただし、ちいさな企業未来会議の報告書にあるような動産・債権担保の普及には懐疑的である。

 そもそも、中小企業の経営者は自社の動産や債権はおろか、決算書の内容すら説明できないのに、金融機関に担保提供する動産や債権を機動的に特定できるとはとても思えない。金融機関としても、動産や債権の評価や融資枠の決定、回収や担保処理手続きなど非常に煩雑な事務処理を抱えることになり、到底現実的ではない。

 また、経営者や役員などによる個人保証も、融資額をフルカバーできる状態にないものが多く、実態的には破綻していると言ってよい。個人保証の問題が、中小企業の事業承継を阻害している(個人保証を嫌って後継者が見つからない)という指摘も尤もである。ただでさえ厳しい経営状況にある中小企業を個人保証のリスクを負ってまで引き継ごうとする者が少ないのは十分理解できる。

 筆者としては、融資取引に一定の緊張感を持たせるために300~500万円程度の範囲で担保や個人保証を徴求することにして、それを超える融資については一部の大型設備投資案件等を除き原則無担保・無保証で対応するべきだと考える。

 ただし、金融機関の貸出リスクをカバーするために、長プラや短プラに5~7%金利をオンするとともに、融資先企業においては3か月ごとに事業収支と資金収支を金融機関に定期的に報告することを義務付けるといった手法を提案したい。確かに金利は高くなるが、所詮は会社のカネから払われるものだから、不動産担保(経営者が所有する場合が多い)の提供や過度な個人保証の呪縛から解放されるという大きなメリットと天秤に掛ければ、たいていの経営者は受け入れるだろう。

 そもそも、中小企業憲章に示されたような“知的資産、事業力、経営者の資質”などをまともに採点すれば、ほとんどの中小企業は落第点しか取れない。

 だからこそ、経営者自らが経営状況の把握に努め、第三者に対する事業の説明能力を磨く必要がある。

 カネを借りるというのは経営の第一歩であるが、そのためには自分の頭の中にある事業計画をキチンと他人に説明し、理解してもらう努力が求められる。自分の事業計画を金融機関や取引先は当然判ってくれているものなどと安易に考えるのは単なる甘えでしかない。自らの属する業界動向や競合製品との比較など、十数年にも及ぶ業務から蓄積されてきた経験や知識、スキルの総量たるや金融機関の職員の付け焼刃の知識の及ぶところではない。だからこそ、資金を借りようとする企業側からの具体的な説明が必要であるし、そちらからアプローチした方が、双方にとってはるかに効率的なのだ。

 事業を行うということは大きなリスクを背負う一方で、成功すればそれに勝るリターンを得られるほか、社会的な地位や名誉をも手に入れることができる。そして、それが可能なのは経営者のみである。

 だからこそ、経営者たる者、自身の事業計画を先ずは役員や社員にしっかりと理解させたうえで、金融機関や取引先等にはいつでも説明できるくらいの心構えは当然持っていなければならない。