うずらのブログ

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生類憐みの令

 先週はヒグマにまつわる大きな事件が、北海道と秋田県で奇しくも同じ日に起こった。

 札幌市では2日間にわたり民家の間近に出没した若い羆が射殺され、秋田県八幡平では倒産寸前のクマ牧場から逃げ出したヒグマに襲われて高齢の女性飼育員お二人が死亡するという大変いたましい事件があった。

 件の秋田の事件に関連して、前々からクマ牧場の管理運営体制に文句をつけてきたNPO法人の代表は、取材に対して「(牧場の環境は)問題外としたうえで、今後については「『閉園』したとしても、環境を改善し、子どもを増やさないようにして、寿命を全うするまで飼うしかない」とコメントしたそうだが、全くリアリティーが感じられない。まさに他人事である。閉園した後の飼育コストやエサ代を誰が面倒をみるかなどといった現実的な課題を全く無視した呑気なコメントだ。

 どうせ、最後は県庁あたりに責任を押し付けようとする無責任な姿勢が目に浮かぶ。行き届かない管理が仇となり、第二の事件が起こってもよいというのだろうか。

 残されたクマにとっても、狭い檻の中で乏しいエサしか得られないようなら、薬殺か射殺してあげる方が楽だろう。

 一方で、札幌市で若いヒグマを射殺したことに対して、札幌市役所宛てに100件もの抗議の電話が入ったということだ。

 ヒグマの射殺と同じ日に、秋田で凄惨な事件が起こったというのに、若いヒグマを殺すなんて可哀そうだとか、山に返せばいいのにとかいった類の世間知らずで幼稚な抗議をする市民の神経はまともなのだろうか。

 今回射殺されたヒグマは、若いとはいえ体長135センチ、体重が120キロもあり、これは、本州で多数の人身被害を起こしているツキノワグマなら成獣クラスの体格に匹敵する。

 ちなみに、ここ5-6年間のクマによる人身事故(ケガや死亡)の件数(環境省資料、死亡者数はH19以降未公表)は、H18/150人(うち死亡5人)、H19/50人、H20/55人、H21/64件、H22/150件、H23/81人(速報値)に上り、いずれの年も全体の9割以上が本州で発生している。つまり、クマによる人身被害の殆どが体格の小さなツキノワグマによるものというのが実態であり、今回射殺された若グマクラスの体格でも成人に対する殺傷能力は十分といえる。しかも、出没地点はまさに住宅街の人家のすぐ裏手であり、近隣住民の安全を考えれば、射殺するなと言う方がどうかしている。

 札幌市では、近年、住宅地や公園などへのヒグマの出没件数が増えていたようだし、昨年は、市内の中心部近くにまでヒグマの成獣が出没して大きな騒ぎになったと記憶している。それだけに、今回の射殺という適切な処置に対して、胸をなでおろした市民も多かったと思う。実際に自宅の裏にヒグマがウロウロされてはたまらないだろう。他人事だと思ってグリーンピースまがいの戯言を吐く連中には、それほど文句を言うのなら、お前の家で飼ってみろと言いたい。

 この手の問題が起きると、お約束のように、野生動物との共生とか、絶滅危惧種がどうのこうのと言いだす連中は、罪もない住民が、秋田で起こったような不幸な事件に巻き込まれても構わないというのだろうか。わざわざ山奥に分け入ってまで野生動物を殺してしまえとまで言うつもりはないが、人間の生活ゾーンに無断で侵入し、人身被害が見込まれる動物は駆除するよりほかない。

 また、クマやイノシシなどの野生動物の被害の話になると、決まって、人間の手によって野山が開発され山に動物の食べ物が乏しくなり、動物が人家の近くに出没するようになると言いだすバカがいるのは困りものだ。

 そういう輩には、ぜひ野山に足を運んでみることをお勧めする。それが無理なら、飛行機の窓から下界を覗いてみてはどうか。

 昭和の高度成長期ならいざ知らず、山林の乱開発なんて20-30年前に終わっている。地方の山林地域で車を走らせると、耕作放棄地や朽ち果てた家屋や畜舎、倉庫などが目につき、公共工事の縮小のあおりで除草作業をしていないせいか道路の側面がびっしりと雑草で覆い尽くされている光景を目の当たりにする。

 人間が自然を破壊していたのなんてとうの昔の話で、いまや人間が緑に駆逐されようとしている。東京周辺でのほほんとしている連中には理解できないと思うが、少々郊外に行けば乱開発どころか、人間が自然に追い立てられているありさまだ。

 

 また、害獣の駆除についても、鳥獣保護法という時代遅れの法律のせいで、対策は常に後手後手になっている。

 クマやイノシシ、シカ、サル、アライグマなどの動物による食害やカラスによるゴミの散乱などにより人間がこうむる悲願は甚大だが、そう簡単には害獣を駆除することはできない。

 いちいち都道府県の許可を取らざるを得ず、下手にケガでもさせようものなら、こちらが逮捕されてしまうケースもある。実際に、北海道で農作物を荒らすヒグマを捕獲する囲いワナを仕掛けた人が逮捕された事例もある。

 これからカラスの産卵期になると、子育てで攻撃的になるカラスに気を付けましょうといった回覧板が町内会で回ってくるが、そこにはカラスを退治しようなどとは決して書かれることはなく、カラスのご機嫌を損なわないようあなたが気をつけるようにといった類のバカバカしいアドバイスがびっしりと書き込まれている。

 いったい、なぜこれほどまでに人間側が我慢を強いられ続ける必要があるのだろうか。

 人間に害を及ぼす鳥獣を駆除することが許されず、黙って手を下そうものなら人間側が罪に問われてしまうというおかしな構図は、どこかで聞き覚えがないだろうか。

 これは歴史の教科書で誰もが必ず学び、恐らく日本人の殆どが天下の悪法だと口汚く批判してきた「生類憐みの令」そのものである。

 ヒグマの射殺だけでなく、被災地のがれき受け入れに対して勘違いも甚だしいヒステリックな抗議電話を入れるような暇人は、その無駄なエネルギーの有益な使い道を足りない頭で考えるべきである。