うずらのブログ

積極的な財政金融政策による豊かで成長力に満ちた社会を目指します

経営と経済は別物

 今年のアメリカ大統領選挙に向けた共和党の予備選挙の様子が、たびたび日本でも報じられている。事前の予想通りロムニー氏が先行する結果となり、現時点で4つの州で行われた予備選挙のうち2つを制している。間もなく始まるネバダ州の予備選挙でも事前の世論調査で、2位以下の候補を大きく突き放しており、順調な滑り出しといったところか。

 件のロムニー氏は、投資会社の経営者として莫大な個人資産を有しており、予備選での広告戦略(相手候補の悪口ばかりの下らないCM)に大いに役立っているようだ。このほか、マサチューセッツ州の知事時代に皆保険制度を導入したこと、自身がモルモン教徒であること、一時期同性愛者を擁護する立場を取っていたことなど話題に事欠かない人物のようだ。実際に、相手候補から、収入額に比べて納税額が低すぎると批判され、個人資産を公開しろと迫られたりしていた。(アメリカの大統領選挙は、いつも同性愛とか中絶の是非とか宗教絡みの踏み絵が多く、対立候補へのネガティブキャンペーンばかりで意外と幼稚だ)

 ロムニー氏のプライバシーについてはさておき(どうせブッシュjr程度の人物だろう)、筆者が気になるのは、マスコミ各社が報じる「ロムニー氏は経営者出身であり経済に強い」といったフレーズだ。

 経営者出身の政治家や立候補者と言えば、最近では韓国の李大統領や先の都知事選挙に立候補した大手居酒屋チェーンのバカ会長が記憶に新しいところだろう。

 この手の「経営者=経済の専門家という思い込み」や「経営と経済を混同する勘違い」は、マスコミだけではなく多くの国民の間で非常に根強いものがある。企業活動は経済循環を構成する重要なパーツの一つであるのは確かなことだから、こういった勘違いが生じるのは仕方のない面もある。

 だが、経営者が経済の専門家なら、国内企業の7割以上が赤字(バブル崩壊以降ずっとこの調子)といった情けない事態を招く訳がないし、世界に冠たる大企業があまた存在し、モノづくり大国を自任してきた日本の名目GDPが1997年以降ずっと低空飛行を続けている(このままでは着陸しちゃうかも…)事実を何と説明するのか。

 経営者の思考は、収入の源泉となる売上高の推移に左右されやすい。売上が順調に伸びていればよいが、それが頭打ちになると途端に経費に削減に熱中し始める。仕入価格を抑えるための下請けいじめに始まり、手形の支払いサイトの延長、従業員の給与削減、交際費や出張費等の削減等々、関係者のモチベーションを委縮させる妙手を次々と繰り出してくる。

 しまいには、売上を伸ばすという最も大切な目標をあっさりと諦めて、まだ削れる経費はないかと血まなこになってリストラできそうな社員を探しまわり、財務諸表とにらめっこすることになる。経営者の視線が外界に向かわず、ひたすら内向きになって犯人探しをするようでは会社もおしまいだろう。

 これと同じことが、日本の政治でも起こっている。

 政治家や官僚、マスコミや識者、多くの国民は、名目GDPを伸ばして経済成長するという最重要課題を諦めていないか。企業や家計に関わらず、売上や所得の源泉となる名目GDPを伸ばすことなく経営状態や生活環境を好転させることなどできない。

 皆が、一介の経営者と同じ視点から売上を伸ばす努力を放棄して、ひたすらリストラや経費削減に熱狂し、あいつは怠け者だとか○○は経費を無駄に使っているとかいった類のレベルの低い非難合戦をしているようでは国が持たない。

 経営を野球選手に例えるなら、経済とはそれら各プレーヤーが個々の能力を最大限に発揮し合って気持ちよく活動できる環境そのものを指す。

 個々の選手は、成績が上がれば当然報酬も上がると信じ込んで自分の成績を上げることのみに精力を注ぎ努力を重ねる。そして、観客たる消費者は、相応の観戦料を支払って、プレーヤーの努力の成果としての素晴らしいプレーを堪能することができる。こういったエンタテイメントが何事もなく粛々と行われるのは、そういったフィールドをしっかり管理して提供する経済の存在があるからなのだが、多くの国民はこのことに気付いていない。

 経済状態がガタガタになってしまえば、いくらプレーヤー(経営者)が頑張ったところで観客も来ないし、報酬も上がらないのは当然のこと。プレーヤーが自らの成績を上げることに熱中していられるのも、この例でいえば、野球というフィールドがきちんと興行として成り立つような環境が整えられているおかげであることを忘れてはいけない。

 経営者など、経済全体から見れば、ほんのちっぽけな一介のプレーヤーに過ぎないことを自覚すべきだ。

 

 経済または経済全体の循環システムは「食物連鎖」と同じようなもので、経営者など、所詮は食物連鎖のシステムを構成するひとつの種に過ぎない。

 「俺はライオンだ」と威張り散らしても、自分の餌となってくれるシマウマやヌー等の草食動物の存在なくしては、今日明日の命をつなぐことすらできない。食物の供給源になってくれる草食動物の数が増えれば、狩りもしやすくなるし、食料に困ることなく健康を維持でき、良好な生活を送ることができる。

 経営者たるもの、こういった当たり前の事実や世の中を構成する大きな流れに気付かなければいけない。