うずらのブログ

積極的な財政金融政策による豊かで成長力に満ちた社会を目指します

クオリティーペーパーを自称する回覧板

 連日のようにTPP問題がTVや新聞を賑わせている。今日(11/8)付けの日経新聞朝刊の一面に、論説委員長名で「国を開かないでどうする」と銘打ち、いかにも日経らしいTPPを賛美する提灯記事が載っていた。

 以下、記事の概要を紹介し、その幼稚な論調を糺したい。

(記事)

「(TPP)賛成派は、自由貿易で製造業の競争力低下を防ぎ、成長するアジアを日本経済に取り込もうと経済の論理で主張する。対する反対派にあるのは、農業、医療などの個別利益と、日本の伝統や制度を守ろうという保守の思想だ。」

 

 まず、日経の定義する“自由貿易”とは何か。日経や彼らが賛美する連中(経団連とか経済同友会あたりの世間知らずな経営者)にとっての自由貿易とは、雇用や所得、製造拠点、技術などを人件費が安くて規制が杜撰な発展途上国に好き勝手に移転させることを指す。そして、こういったバカげた思想を背景に、製造業はおろか国内の幅広い産業が、その競争力を削り取られてきた。

 彼らは、雇用の創出や労働分配を通じた実体経済の発展には殆ど貢献していないくせに、円高や法人税、国内の人件費や労働規制などに文句をつけては、製造拠点の海外移転を進めて国内産業を空洞化させてきた。このように、社会基盤崩壊の主犯格とも言える彼らに、更なる自由貿易の推進にフリーハンドを与えてしまえば、国内の競争力は低下どころか崩壊してしまうだろう。

 もっとも、TPP自体が、一定地域内の経済をブロック化するものである以上、自由貿易とか開国なんて言う概念とは、そもそも相容れないものである。

 また、“成長するアジア(多分、中国とかインドのこと)”は、今回のTPP参加予定国に一国も含まれていない。

 前回の記事でも指摘したように、アジアに成長をもたらしてきたのは、先進国からの所得や雇用の移転の結果であり、アジア諸国内の自律的な発展の結果とは言い難い。

 この先、仮にTPPが推進されると、日本やアメリカ国内では、更なる競合激化や法制度変更に伴う様々なコストの発生、それに対処するためのコストカットが起き、デフレは更に悪化するだろう。そうなれば、人件費の安さのみを売り物にした製造センターたるアジア諸国にとって、経済発展の主体である外需が縮小することになり、成長にブレーキが掛かることは必定だ。

 更に、“農業、医療などの個別利益”の部分は、意図的に、農業や医療を既得権益にしがみつく抵抗勢力として蔑視する書き方をしているが、TPPの交渉分野が20以上の広範囲に及ぶものである以上、その悪影響は国内の広範な産業に及ぶものと想定され、むしろ「個別利益」にしがみつこうとしているのは製造業の方だ。

(記事)

国会議員は「全国民を代表する」存在だ。もちろん個別利益である部分最適の主張が否定されるものではない。ただ、最後は全体最適である」

 

 繰り返すが、TPP問題でダダをこねて部分最適の主張を撒き散らしているのは“製造業”であり、全体最適が重要というのなら、国内産業全体の発展という観点から態度を改めるべきは製造業であることは疑いない。

(記事)

「もうひとつは歴史に学ぶということだ。モデルは幕末である。開国か攘夷かで、国内は真っ二つに割れた。それを乗り越え、明治国家をつくり上げた先人の苦労は、いまいちど思い起こしていい。」

 

 こんなものは、日本で社会的に高い地位にある層がいつもやらかす困った時の幕末ネタや維新ネタの乱発に過ぎない。

 歴史に学べというが、江戸幕府がハリスに恐喝されて無理やり締結させられた不平等条約(日米和親条約日米修好通商条約)を改正するために、当時の明治政府が大変な苦労を背負ったことを忘れていないか。TPPこそ対アメリカ不平等条約の再締結につながりかねない危険な存在であることは周知のとおり(米韓FTAが良い見本)で、そんな悪条約の締結に前のめりになっておいて、それこそ明治の先人たちに恥ずかしくないのだろうか。

 どうせ歴史に学ぶのなら、明治政府成立時の政府紙幣発行や高橋是清世界恐慌からの脱却の際に採ったリフレーション政策など、自己の妄想や夢物語ではなく、現実に即した政策を果敢に実行した行動力こそ学ぶべきだろう。

(記事)

「(日本は)デフレから抜け出せず、2010年度の名目GDPは1991年度並みの水準だ。国が縮んでいくかのようだ。伸びるアジアを引き寄せないで、日本はどうやって経済成長を実現していくのか。安全保障上もTPPが大国化する中国へのけん制になるのはたしかだ。」

 自分達で、さんざん日本の経済成長を邪魔する政策(構造改革新自由主義的な政策)をゴリ押ししておきながらよく言えたものだ。

 財政支出に反対し、無駄の排除を叫び、国内の人件費が高過ぎると言って賃金水準を低下させ雇用も流動化させる、雇用や技術、所得は好きなだけ海外に移転させる、こんなバカげた事態を放置しておいて名目GDPが伸びるはずがない。ガソリンを入れずブレーキを踏んだままで車を前進させようというのだから恐れ入る。

 伸びるアジア云々については、前述のとおり単なる妄想に過ぎない。また、中国に対するけん制と言ったのと同じ口から、アジア(=中国)の内需を取り込むなんて言うのは自己矛盾も甚だしい。

 

 長引くデフレの脱却や東日本大震災からの復興を目指す日本にとって、TPPによってもたらされる余計な競争や法制度の変更などに伴う手間やコストを負担しているような悠長な状況にはない。日本はまさに重病人であり、TPP参加によって強制されるマラソンに参加できるような状態ではないし、参加する必要はない。

 TPPに反対する立場から、食の安全が心配だという意見が聞かれるが、懸念すべきはむしろ“職の安全”をどう守るかということだろう。

 一刻も早くデフレを脱却して、それこそ名目GDPを成長させていくためには、いたずらに人口減少や内需の縮小を嘆くばかりではなく、それらを克服するための現実的な政策はどうあるべきかを考え実行に移すべきだ。

 悲観論を撒き散らして、国内はもう駄目だ、成長しない、国を開け、なんて短絡的かつ煽情的な主張をする新聞がクオリティーペーパーを自称し、毎朝、世のサラリーマンを洗脳しているかと思うと嘆かわしい限りだ。