うずらのブログ

積極的な財政金融政策による豊かで成長力に満ちた社会を目指します

変化に気付かない愚か者

 先日、目にした週刊誌に、TPPを積極的に推進せよといった趣旨の某有名評論家の記事が掲載されていた。同氏は、TPPの重要性をひとくさり述べた後に、平成の開国とも言える大転換期に農業保護などといった内向きな対応をしていては世界の潮流についていけない、今やグローバリズムの時代だ、閉鎖的な農業を改革するチャンスだ、世界の変化に背を向けるな と自信満々に締めくくり、経団連や日経の連中が驚喜しそうな記事であった。

 社会的あるいは経済的に強い立場の人間が、「グローバル」とか「改革」、「変化」などといった耳触りの良いキーワードを使った駄文をばら撒き、それをマスコミが増幅して喧伝する。ここ10年余りに亘り、新自由主義構造改革を妄信する馬鹿が国民の支持を集めて政・官・財・報に及ぶ強力なカルテットを形成し、それまでの濁りの中にも安定感のあった世の中の仕組みを破壊し尽くしてきた。

 青臭い書生論しか吐けない彼らは、「構造改革」、「ムダの排除」、「バラマキの排除」、「後世にツケを残すな」、「透明性の確保」、「グローバル化」などといったデフレ対策として何の役にも立たないばかりか極めて有害なスローガンを巧みに撒き散らしているだけなのだが、ワイドショーとか新聞記事にコロッと騙される不勉強な国民から強い支持を得ており、そのことが、この10年の間に社会体制や構造に大きな変化をもたらしたと言っても過言ではない。それは、自民党から民主党への政権交代といったちっぽけなものではなく、国全体あるいは国民の基本精神や思考経路、行動様式など社会運営の根幹に関わる基点が、戦後数十年間に亘り積み上げられてきたものとは全く異質なものに変ってしまったと言ってもよい。

 だが、その“変化”は、国民生活の向上に有益であったとは言い難い。変化がもたらしたのは、世界に先駆けたデフレ経済とそれに破壊されたみじめな社会基盤、数十万人にも及ぶ自殺者や数百万人にもなる失業者のみである。その情けない経済パフォーマンスは、どれだけ贔屓目に見ても、彼らとそれを支持する多くの国民が散々こき下ろしてきた公共事業頼みの土建国家の時代に数段劣るものだ。

 にもかかわらず、彼らは決して自らの過ちを認めようとはしない。不況の原因を構造改革グローバリズムの不徹底に押し付け、財政支出の拡大を絶対悪と決め付けるなど、己の失敗から目を逸らし、適切な問題解決から逃げ続けている。

 彼らは時代の変化を認めようとしない化石時代の絶滅種と同じ存在だ。自らの思想や観念を妄信するあまり、冷静に世の中の変化を分析する能力がない。

 財政支出だけは絶対にしたくないという幼稚な理由のせいで、需要不足による長期デフレや高止まりする失業率、雇用や収入の不安定感、内需縮小による外需頼みの経済運営、馬鹿の一つ覚えのような金融緩和頼みの経済対策、新興諸国への雇用や所得移転など先進諸国に共通する真の病根を治療する有効な術がない。打てば効果のある薬が目の前にあるのに、自分が信奉する学説を曲げたくないがためにそれを手に取ろうとせず、患者の病状は悪化する一方だ。

 “変化に背を向けるな”という言葉は、彼らにこそ投げ掛けられるべきものだろう。