うずらのブログ

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若者は消費に興味を失ってなどいない

 2月15日に総務省から「家計調査」(報告家計収支編平成22年平均速報結果の概況、以下同調査より抜粋)が発表された。これについて、翌日の日経新聞が、次の2点に焦点を当てて採り上げているが、相変わらず我田引水気味のミスリード記事になっている。

 ① 総世帯ベースの平成22年の総世帯(平均世帯人員2.47人、世帯主の平均年齢56.4歳)の消費支出は1世帯当たり1カ月平均252,328円で、物価変動の影響を除いた実質で0.3%の増加となった。(ただし名目値では0.5%減少)

 ② 単身世帯の消費支出を年齢階級別にみると、35歳未満の世帯は156,582円、35~59歳の世帯は186,396円、60歳以上の世帯は150,669円となった。対前年実質増減率をみると、60歳以上の世帯で実質3.4%の増加となったほか、35~59歳の世帯で実質2.4%の増加となったが、35歳未満の世帯では実質7.9%の減少となった。

 まず、①について、リーマンショックによる落ち込みから反転して勤労世帯の実収入が持ち直しつつあることや家電エコポイントによる関連支出の伸びが要因と解説する。

 しかし、今年の春闘で大手自動車会社の労組でさえ、軒並み定期昇給を諦めて一時金の上積みに切り替えたことでも判るように、一部を除けば、長引く不況の出口は一向に見えず、到底世帯ベースの実収入が増えるような状況にないのは、多くの国民が実感していよう。さらに、平成22年は、家電エコポイント、住宅エコポイントエコカー補助金、公立高校の無償化、子供手当、たばこ増税など消費を刺激する、または、消費に廻せる臨時収入が目白押しだったにもかかわらず、上記のように消費支出は実質で0.3%しか増加していないし、ましてや名目値では0.5%減少しているほどだから、いかに消費支出への逆風が強かったのかが判る。溢れるほどの消費刺激策や物価の下落という下駄を履かせてもらい、ようやくほんのちょっぴり消費が(統計上)増えたということに過ぎない。もし本当に“勤労世帯の実収入が増えた”のなら、支出の伸びが、より鮮明に出てくるのが自然だ。

 次に②について、35歳以上の世代が軒並み消費を伸ばしている(あくまで実質値だが)一方で、35歳未満の若者世代の消費支出は対前年比で7.9%減と大きく落ち込んだ。細かい項目を見ると、交通・通信費、住居費、食糧費をはじめ光熱費以外の殆どの項目で支出が減少している。光熱費の増加とて、昨夏の耐えがたい猛暑の影響だろうから、実質的には全ての項目で減少していたと考えて差支えなかろう。

 ところが、この若者世代の消費支出減少の要因を、日経は「若者の消費離れの表れ」とあっさり結論付けている。最近、バブル世代以降の世代を「嫌消費世代」などとカテゴライズする流れがあり、その特徴は次のように説明される。

『思春期に、バブル後の混乱、就職氷河期、小泉構造改革を世代体験として持ち、共通の世代意識を共有している。「自分の夢や理想を高望みして周りと衝突するより、空気を読んで皆に合わせた方がいい」、と言う意識だ。この意識の背後には、児童期のイジメ体験、勤労観の混乱や就職氷河期体験によって植え付けられた「劣等感」があるようだ。(中略)この世代が嫌消費をリードし、下の世代である20代前半の「少子化世代」にも波及しているのが現状だ。(中略)彼らは収入が増えても買わない。彼らの世代心理に接近することが大切だ。説得のキーワードは「スマート」にある。とにかく、割高な商品は嫌いだ。周りから「バカ」にされるからだ。外食は切り詰めているが、男性でも鍋や炊飯器は持っている。スイーツも作る。「話す携帯」は値段で選ぶが、「使う携帯」はコンテンツの豊富さで選ぶ。店では買わないが、情報が豊富なネットでは常連だ。海外には行かないが筋トレグッズは好きだ。彼らが買っているものには三つの条件が揃っている。[1]自分の趣味に合って、[2]節約に貢献してくれて、[3]皆から利巧と思われることである。 (週刊ダイヤモンドより抜粋)』

 この世代は、構造改革というインチキ新興宗教を信じ込んだ国民によって大きく社会が変節してしまった影響をもろに被った世代でもあり、消費に慎重にならざるをえない事情は十分理解できる。だが、彼らに限らず、世の中に消費を嫌う人間などそうそういるはずがない。仏門に仕える生臭坊主とて金集めに必死になる世の中なのに、ましてや、消費を嫌う人間がひと塊りのボリューム層を形成するなど、常識的に考えればあるはずがない。彼らが消費に慎重なのは、単に収入が少ないことや収入の見通しが不安定なことによるものと考えるのが自然だろう。消費したくてもカネがない、もしくは入ってくる見通しがないからできないだけだ。勝手に若者を消費から切り離して論じるなど、思い違いも甚だしい。

 まともな職について安定した収入さえあれば、車にも乗りたいと思うし、パソコンだって買いたいと思うだろう。近頃の若者は草食系で元気がないとか、若者が車に乗らなくなったとか、消費に興味がなくなったとか、根拠のない言いがかりをつける暇があれば、彼らに社会参加の機会を与えるべきだ。景気の良い時代に大した苦労もせず社会に出られた世代が偉そうなことを言う資格はない。むしろ、次代の若者に、ロクな社会を引き渡せなかった無能さを恥ずべきだ。

 彼らをあたかも突如現れた“ニュータイプ”的に扱うだけでは何も解決しない。彼らに安定的な職や収入の機会を与えるという根本的な解決策から逃げ回ってはいけない。彼らは次代を担う大切な人材なのだから。

 若者世代が簡単に社会参加できないような状況を放置しておいて、ついてこれない若者に手を差し伸べようともせず、彼らは消費に興味をなくしたなどと言い切る冷たさは、一体どこから来るのだろうか。