うずらのブログ

積極的な財政金融政策による豊かで成長力に満ちた社会を目指します

豊かな土壌があってこそ作物は成長する

 先日、日テレの世論調査で菅政権の支持率が22%に下落したと報道されると、立て続けに共同通信による世論調査では20%を切ったと報道され、いよいよ選挙好きのマスコミによる倒閣運動が始まったようだ。

 昨年の尖閣諸島問題は言うに及ばず、やることなすことケチをつけられっぱなしの民主党は、麻生政権の末期に似た状況にあり、仮に衆議院解散という事態になれば、政権を手放す可能性が高い。

 そもそもこの政権は、現在の自民党主流派層の連中(小泉のポチ)と同じで、他党や業界団体、諸外国に対して根回しをするといった、政治家としてというより社会人として当たり前のことができないから困る。政策通を気取る政治家(松下政経塾上がりの世間知らず)に限って、自分が良かれと思う理想を強引に世間に押しつけようとする。TPPや消費税引き上げを前提とする税制・社会保障の一体改革などを巡る青臭い(アホ臭い)議論が好例である。現実には、複雑な利害関係の調整が必要で、そこに妥協や駆け引きを通じて落とし所の探るといった事務作業があってしかるべきなのに、そういうことは一切無視されて、突然国民の前に重要課題として提示される。しかも、一から議論するのではなく、マスコミが加担するのをいいことに、半ば決まってしまった結果を承認させるための議論にミスリードしようとする。

 だが、仮に近々衆議院解散による選挙があったとして、政権復帰が予想される自民党が、疲弊しきった日本を再び成長軌道に乗せることができるだろうか。谷垣総裁をはじめ、構造改革派の信者が集う自民党は、何を思ったかこのタイミングで“財政健全化責任法”などというバカ法案を提出しようとしている。

 この法案のポイントは、当面の財政健全化目標についてストック・フロー両面の目標を設定し、(1)2021年度以降の各年度末における国・地方の債務残高対GDP比を安定的に低下させる(2)そのために、国・地方合わせた基礎的財政収支プライマリーバランス)を2020年度めどに黒字化、遅くとも2015年度までにプライマリーバランス対GDP比を2010年度から半減させる。目標を実現させるために、政府が各年度に講ずるべき措置を財政健全化中期計画として定める。また、各年度の予算編成は、財政健全化目標と 財政健全化中期計画と整合的なものとするとし、新たな施策を実施する場合には原則その経費を上回る財源を安定的に確保するペイ・アズ・ユー・ゴー原則を遵守することを規定する。(ロイター記事より抜粋) という点にある。

 財政の健全化という文句だけを切り取れば、誰しも反対しづらいが、デフレ不況の苦境に立つ日本にとっては、財政政策にキャップをはめてデフレ期待を永続化させかねないもので、成長の阻害要因にしかならない。総需要の調整による経済対策を行うには、財政・金融政策の両輪が欠かせないことは言うまでもないが、このバカ法案は、少なくともその片輪を止めようとしている。これでは車は前に進めない。

 にもかかわらず、世間やマスコミはこの法案を“バラマキ禁止法案”として評価している。いまや、公務員や相撲協会と並ぶ悪の代名詞として、すっかり定着した「バラマキ」だが、日本全体が経済的に疲弊する症状に対しては、極めて効果的な役割を持つものと個人的には評価している。

 現状の閉塞感の打開策として提案されがちなのが、成長分野に資源(カネやモノ)を集中投資するという考えだろう。一時、竹中や島田(当時は慶応大)あたりが盛んにITやバイオを持ち上げていたあの構図だ。しかし、現実には、IT分野に集中的に投じられた資金も、当該分野への参入を目指す下請け業者のダンピング競争を煽っただけで、とても産業の隆盛や雇用の拡大を実現したとは思えない。特定の産業分野を拡大させるには、技術水準を高めるための、いわば供給サイドの強化的な研究投資や開発投資が必要になるが、結局、最終的な成否を決めるのは、その分野の製品やサービスに永続的な買い手が付くかどうかに懸かっている。需要家の存在が事業や産業の成否を決める…、企業はモノやサービスを売って成長するもので、考えてみれば当たり前のことなのだが、経済論議の場では忘れられがちなポイントだ。

 筆者の取引先企業にも、ITやバイオ、医療など成長分野に位置づけられる企業があるが、実際のビジネスの場では、IT企業であれば建設現場や林業、酪農家向けの管理システムを開発したり、バイオ企業であれば家畜糞尿の処理システムを開発したりと、いくら高邁な技術論をぶってみても最終的な需要の行きつく先は、案外身近な所にあるもので、だからこそ分厚い需要が見込まれるのだ。(宇宙産業など特殊な需要しか見込めないものは、見た目は派手だが需要には限りがある)

 このように、土木・建設、運輸だけでなく、いわゆるオールドエコノミー分野に選別され厄介者扱いされる産業の成長なくしては、成長のけん引役が期待されるニューエコノミー産業の成長もあり得ない。精魂込めて改良した新品種の種も、豊饒な土壌があってこそ花開く。経済対策を打つ時は、上から目線ではダメで、ボリュームのある層に目線を合わせることが肝心だ。経済は輪のように循環し連関し合っていることに気付かなくてはならない。

 国民の多くが忌み嫌う「バラマキ」を、筆者が評価するのも前述の理由による。特定の産業に集中的に資金を投じても、効果は限定され、無駄が生じやすい。ましてや、トリクルダウンなどといった夢想論が既に破たんしたことは記憶に新しい。

 それよりも、厚く広くあらゆる産業に資金を行き渡らせることが重要である。そのあとは、それこそ民間の自由な経済競争に任せておればよい。