うずらのブログ

積極的な財政金融政策による豊かで成長力に満ちた社会を目指します

詐欺師は危機感を煽りたがる

 インチキな投資話や詐欺事件が相変わらず続いている。
 先日も、福岡県の投資コンサルタント会社「夢大陸」の幹部が、フランス国債など外国債券へのニセの投資話で、全国400人余りから総額67億円もの資金を騙し取ったとして逮捕された。   
 記憶に新しいものでも、H21のL&Gによる円天詐欺事件(被害者約4万人、被害総額約1,285億円)、H20のふるさと牧場による和牛商法詐欺事件((被害者約1.4万人、被害総額約387億円)、同じくワールドオーシャンファームによるフィリピンでのエビ養殖詐欺事件(被害者約3.5万人、被害総額約849億円)のほか、平成電電大和都市管財近未来通信全国八葉物流などなど枚挙に暇がない。警視庁の資料によると、H21年中に摘発された嘘の投資話(詐欺)に騙された被害者は5.4万人、被害総額は約1,654億円に上る(被害者数は振り込め詐欺の7.5倍、被害総額は17.2倍)というのだから驚く。   
 無論、憎むべきは詐欺を引き起こした犯罪者達であり、被害者を責めるのは酷というもの。(犯罪者たちは、出所後に密かに使うべく集めた金を既に秘匿しているのか、その多くは逃げもせず、逮捕されても飄々としている。) 犯罪者達が逮捕されると、販促時のセミナーの様子や勧誘のパンフレットなどがTVで紹介される。そこに映る詐欺の張本人は、大抵、金縁の眼鏡や派手なスーツに趣味の悪いネクタイや指輪を身に付けて見るからに怪しい恰好をしてるし、組織の名前にも“夢”とか“ワールド・コスモ・未来・グローバル”とか、軽薄そうな文字を使っている。なのに、小金を持った良識ある(と思われても仕方のない年代の)人々が、なぜかコロリと騙されてしまうのは不思議でしょうがない。   
 以前、金融機関の不良債権処理問題が一段落していた頃の話だが、筆者の取引先(年配の男性)が、“銀行は俺たちを騙そうとしている、銀行なんて信用できない”と息巻いて、怪しげな“○○管財”なる名称の企業が販売する抵当証券を数百万円単位で購入していた。件の顧客に、いくら預金保険の話を説明しても一向に聞く耳を持たず、とにかく銀行は信用できない(信用したくない)の一点張りであったが、今頃どうしているだろうか。   
 “1年間で投資が倍になります”とか“今なら金利が15%つきます”とかいった現実離れした嘘に、用心深い彼ら(投資詐欺事件の被害者)が簡単に騙されてしまうのはなぜなのか。恐らく、彼らの中に「自分は世間並み以上の資金を保有しており、運用の果実(利得)を得るに値する人間だ」という気持ちがあり、「そんな自分がお金を預けさえすれば、勝手に誰かが増やしてくれるのは当然のこと」などと思い込んでいるからだろう。   
 少し考えればわかることだが、年利○%のリターンがあるということは、少なくとも元金+そのリターン分を支払う“誰か”が存在して初めて成り立つ話だ。例えば、年利20%の配当を謳う投資話があるなら、投資家から集められた資金を原資にして様々な事業や投資が行われ、少なくとも1年間で元金に金利分20%(+事務経費)をONした以上の収益を上げなくてはならないが、日本だけでなく世界中でモノが売れずに困っている世の中でそんな上手い話があるわけない。こんなことは一般の社会人なら常識のレベルだろう。普通にTVや新聞を眺めていれば、長引くデフレ不況により名だたる大手企業でさえ売り上げ確保に四苦八苦しているのを知らないはずがないと思うのだが、海外銘柄なら大丈夫とか新規に株式公開するあの会社なら大丈夫といった幼稚な嘘話を根拠もなく信じ切ってしまうのが実情だ。   
 詐欺の勧誘ツールによく使われる“業界注目の○○技術”とか“特許取得済み”といった類のレベルの話なら、実際には業界内に腐るほど転がっている程度の話で、決して大化けするようなシロモノではない。よく、個人で株の売買を始める人が、株は経済の勉強になる(大抵は株をやるための言いわけ)と得意げに言っているが、会社四季報やネットの情報を収集する程度のことは“勉強”したうちに入らない。(日経ビジネスやダイヤモンドなどを読んで業界通気取りになっている人は要注意)   
 「誰かの収益は、他の誰かからの支払いによって生まれる」という当たり前の理屈や実体経済の仕組みを理解していない(しようとしない)から、子供だましの詐欺話に騙される人が後を絶たないのだろう。本当に安全性の高い投資(運用)で儲けたいと思うなら、かつての高度成長期やバブル期のような内需主導型の経済成長を実現させて資金需要を高めたうえで、預金など安全な金融商品金利が上がるような経済環境を創るほかない。   
 冒頭の夢大陸は、「日本経済は破綻する」などと投資家の不安を煽っておいて金集めをしていたようだ。被害者も、日本が破綻すると煽っておきながら“日本円”を必死に集めようとする連中を見て怪しいと思わなかったのだろうか? 年がら年中マスコミやインチキな評論家に、さんざん日本破綻論を吹き込まれているから、意外にあっさりとこんな嘘話を信じる人も多いのだろう。   
 実際にそんなことはあり得ないのに、“○○しなければ悪いことが起きる”的な脅し文句に日本人は弱い。弱いからこそインチキな投資話や怪しげな新興宗教に騙される。
  「構造改革しなければ…」、「グローバル化しなければ…」、「規制緩和しなければ…」、「プライマリーバランスを黒字化しなければ…」といったお約束の脅し文句に加えて、最近は「TPPを締結しなければ、グローバル化のバスに乗り遅れる」や「増税しなければ、社会保障が維持できなくなる」といった新種の呪文が跋扈している。 当然のことながら、構造改革規制緩和をしたって、売上や賃金などフリーに使えるカネ、いわば需要に回せる資金の絶対額が増えなければ内需の回復、ひいては経済成長などありえない。先の投資話のところで述べたように、投資が成立するには、リターン分の資金を提供する者の存在が絶対に必要なのだが、構造改革規制緩和絶対教の信者には、その視点が欠落している。需要という“経済成長の根拠”を無視して、供給力を高めるためのアクションを起こせばよい結果が生まれると妄信している。供給に対する需要がなければ経済成長など成立しえないが、彼らは、国内需要の創出はそっちのけで、大した期待もできない海外需要が無限にあることを信じ込み、供給力を高めることばかりを唱えている。   
 バブル崩壊後の20年間、国民はこの手の詐欺話に騙されてきたが、いまだに圧倒的多数の人が、不況の原因は官僚の無駄遣いにあるなどといった類のおとぎ話を信じ込んでおり、勉強不足も甚だしい。   
 これら構造改革教の信者による詐欺の被害額(実現できなかった名目GDPの総額)は年間数百兆円にも上り、詐欺の被害額などとは比べ物にならない。