うずらのブログ

積極的な財政金融政策による豊かで成長力に満ちた社会を目指します

たかり屋の逆ギレ

 海外企業との競争力強化をお題目に経済界(経団連)と経済産業省から、法人実効税率を5%引下げるよう政府に対して強い要望が上がっている。

 これに対して財務省サイドが、政府税制調査会を通じて代替財源としてナフサ免税の縮小や研究開発減税の廃止を強く求め、これに反発した経団連の米倉会長が、「課税ベースを拡大するのなら法人税減税はもう結構ですと言わざるを得ない」と逆ギレしたことが今朝のニュースで報じられた。

 財務省のHPから抜粋した資料によると、各国の大企業の法人所得課税実効税率(国税+地方税)は、日本40.69%、アメリカ40.75%、フランス33.3%に対して、ドイツ29.41%、イギリス28%、中国25%、韓国24.2%となっており(各国の税法に細かな違いがあり一概に比較はできないが)、成長著しい中国や韓国企業はおろか欧州諸国と比較しても税率が高すぎ、国内企業にとって国際的な競争力の足枷になっていると主張する経済界の論拠となっている。

 よく知られているとおり、国内の法人事業所の7割は赤字企業(欠損法人)とされており、実際、国税庁のHPにある統計データでも平成20年度時点で約260万社の申告法人のうち71.5%もの企業が欠損法人とされている。つまり、法人税を納税しているのは全体の3割にも満たない(28.5%)ということだ。データによると、平成9年の欠損法人割合が64.8%であるから、6.7ポイントも悪化していることになる。

 また、黒字企業(利益計上法人)76万社のうち、いわゆる大企業は1.6万社と2.1%に過ぎないが、その所得金額の合計は約9兆円と法人全体の所得額33兆円の27%にもなる。

 裏を返すと、法人税を5%減税しても、恩恵が及ぶのは一部の企業に限られ、たとえ減税してもそれが一次的に国内経済に与える影響は極めて限定的と言える。なぜなら、最近の企業、特に大企業は、国際競争やグローバル化だの、筋肉質の経営体質だのと屁理屈を並べて、収益を上げても社会や下請はおろか、従業員にすらそれを還流しようとしないからだ。ひところ喧伝されたトリクルダウン説なるものは企業のワガママを是認するだけの幻想に過ぎなかった。

 国税庁のデータ(給与所得者の給与階級別分布)によると、給与が400万円以下の層の全体に占める割合(男女合計)が、平成8年度には50.4%であったのに平成21年度には60.1%と10ポイント近くも上昇している。当然、400万円以上の層は49.6%から39.9%と大きく減っている。また、平均給与も平成11年の461万円から平成21年には406万円と12%も減らされている。

 一方で、当の法人税は平成10年の引下げ前の実効税率は49.98%もあったのが、前述のとおり40%近くにまで引き下げられている。加えて、この間に、金融緩和による低金利、平成15-16年の35兆円にも及ぶ為替介入による円安誘導と米国債購入による海外需要創出、労働規制緩和による人材流動化や賃金コストの圧縮、自由貿易協定などによる関税率の低下、安易な海外進出やコストカットを賛美するマスコミの世論醸成など数々の恩恵を受けながら、企業サイドは、その果実を一切社会へ還元してこなかった。それどころか、新卒採用の削減、リストラの横行、給与・手当てなどの削減、交際費の削減、無謀なノルマの強要、長時間労働の強要などもはや反社会的としか言いようがない行動を取ってきた。

 こんな恩知らずのワガママ息子に減税という小遣いを与える必要があるのか。このたかり屋は、せびりとった小遣いを友達との遊び(海外投資)には喜んで使うだろうが、決して家族のためには使おうとしないだろう。

 この時期に法人税減税を言い出すのなら、雇用の確保や給与所得の向上、生産拠点の国内回帰などに関して、経済界から念書や誓約書くらい取るべきだろう。

 そもそも、法人税の課税対象になる税引き前利益は、全産業の平均値でも売上高の1-3%程度に過ぎない。これに掛かる税率を5%くらい下げたところで大した効果はない。その程度のことに血道を上げるより、企業活動の源泉ともいえる売上を増加させることにこそ注力すべきだろう。それには内需の拡大が最も早道であり、長期かつ大規模な財政・金融政策が欠かせないが、構造改革教の熱心な信者である経済界の連中は、この簡単な理屈を受け入れようとしない。

 苦労を克服した末の成功物語(苦労を押し付けられるのはたいてい従業員や下請なのだが…)が大好きな連中は、財政支出や金融緩和による好況期創出を嫌う。努力もしないでゾンビ企業が生き残るのはけしからんという理屈だろうが、長引くデフレ不況の克服という結果こそが重要なのであって、財政支出するくらいなら落ちぶれたほうがマシなどと手段の善し悪しに拘泥して結果を失うのは本末転倒だろう。ゾンビ企業だって、売上さえ確保されれば、立派に消費主体としての役割を果たせる。

 景気回復の手段として、財政負担を伴う内需拡大を忌避し、ひたすら外需の開拓を求める最近の論調も同じ過ちを犯していると言える。その外需とて当該国家の財政負担を源泉としていることに気付かないのだろうか。為替切り下げなど通貨安競走が盛んになると、あちこちから近隣窮乏策だと批判の声が上がるが、近隣窮乏という意味なら外需頼みの経済運営とて同じことではないか。