うずらのブログ

積極的な財政金融政策による豊かで成長力に満ちた社会を目指します

口先介入

 町の商店主やタクシー運転手などに景気状況を聞く「景気ウォッチャー調査」の結果が発表され、なぜか前月比2.4ポイントUPの49.8ポイントに回復したようだ。

 当然のように、政府サイドから、景気持ち直しの動きが見られる、景気は自律回復に向かいつつあるなどといった寝ぼけたコメントが寄せられ、それをマスコミがヨイショするといういつものうんざりするパターンが繰り返された。マスコミは、政治とカネなど政治絡みの問題ではいつも政府を攻撃するくせに、なぜか景気回復への大本営発表には先頭を切って同調する。これは、小泉政権の頃から一貫している。

 一方で、警察庁からは12年連続で自殺者数が3万人を超えたとう、まさに現実を体現する結果が報告された。近代日本で起こった大惨事の代表ともいえる阪神淡路大震災での死者が6,400名余りであることを考えると、実にその5倍もの貴重な人名が毎年失われている。自殺の理由や背景はさまざまであり、全てが経済問題で解決できるものではないだろうが、せめて名目GDPが毎年2-3%ずつ成長するようなノーマルな経済状況が続いておれば、こんなにも多くの人命が損なわれることはなかったと思う。やむを得ず死を選択せざるをえなかった人の無念さや残された家族の苦悩は如何ばかりだろうか。それを思うと財政再建云々を理由に財政支出を拒む態度にはらわたが煮えくり返る。

 だが、現実には、そういった不幸な人々(やむを得ずフリーターになった人やニートの人も含む)を掴まえては、自己責任だの、やる気がないだの、自立心がないだのと低脳で冷たい精神論を振りかざして、何の手助けもしようとはしない。しかも、そういった卑しい意見を吐くのが、政治家(特に自称改革派の議員)やマスコミ、エコノミスト、一部の官僚だけでなく、いわゆる一般の人の中にも多く存在するのが恐ろしい。

 デフレ経済下では、いやでもパイやイスの数が減っているのだから、平時であれば十分なレベルの努力をしても、どうしてもあぶれる人が出てくる。下りエスカレーターに乗せられたようなものだから、懸命に駆け上がっても現状維持すら難しい。これは、個人の努力の問題では解決できるはずはなく、政治が解決すべき(政治にしか解決できない)問題なのだ。

 就職が無理なら起業すればよいなどと世間知らずな意見を聴く必要はない。起業は好況時でもハイリスクな行為なのに、ましてや需要がシュリンクしているデフレ経済下で成功する確率は極めて低く、他人にだから言える無責任な意見だ。(自分の名刺に社長とかCEOとか刷れる楽しみはあるが…)

 財政支出を嫌う政府、財務省、日銀、マスコミの連中は、景気の悪化を認めたがらず、景気が最悪の状態になって財政支出やむなしとの声が上がるのを未然に防ぐために、日銀の短観や景気ウォッチャー調査等を利用した“口先介入”が行われる。気の弱い日本のサラリーマンは、クオリティペーパーと称される(自称に過ぎない)日経新聞に、景気が底を打ち回復基調にある(だいたいが外需主導で内需への波及には時間を要するとの但し書きが沿えられている)などと自信たっぷりに書かれると、周囲のトレンドに取り残されまいと見栄を張り、自分の会社の業績が良くなくても記事の内容を受け入れようとして洗脳される。自分の頭で考えようとしないサラリーマンや主婦層、家でTVや新聞ばかり見ている高齢者層には、この口先介入の効果はてき面である。

 最近では、これとの合わせ業で、中国の経済成長振りをやたらと褒め称えて中国向けの外需を煽ろうとするやり方(国民の多くが恩恵を受ける内需拡大には反対=他人が幸せになるのは許せん)や経済指標では図れないブータンの国民幸福度が高い(経済的な成長はあきらめろ)などと紹介するやり方が横行しているから要注意である。

 お金を称して“命の次に大切なお金”という言い方があるが、まさに命>お金という真実を言い表している。自殺や失業の放置、非正規社員の増加などを解決することが、いくらでも創れる“お金”を崇めることに比べて、はるかに大切なことは言うまでもない。命を守るためには、手段に過ぎないお金の活用を惜しむべきではない。