うずらのブログ

積極的な財政金融政策による豊かで成長力に満ちた社会を目指します

給料はどこから来るの?

(質)「皆さんの給料は、誰が払ってくれていると思いますか?」

(答)「部長です。」、「社長です。」、「いや、株主だと思います。」

 すると、講師が得意顔でこう答える。「皆さんの答えは間違っています。正解は、お客様です。」

 ひと昔前の新入社員研修でお約束のように見られた光景だ。

 私もこんな新人研修を受けた身であり、当時はただぼんやりと納得させられものだが、永らく続くデフレ不況の中、TVや新聞などで次のようなやり取りを聞いていると、上記の回答もなるほどと実感させられる。

 (TVのリポーター)「今年も厳しい年になりそうですが。」

 (新橋駅前のサラリーマン)「これだけ不景気だとどうしようもない。(自分の仕事を)頑張るだけです。」

 働く者の回答とすればこれが限界だろうが、仕事を頑張っても消費がついてこないのが悲しい現実だ。この点がまさに大事な点であって、日本経済を氷付けにしているデフレ不況下ではそう簡単には消費が伸びるはずもなく、生産性を上げろ、付加価値を高めろ、任天堂やアップルを見習え などといった定番の説教や精神論で解決できる類の問題ではない。Willやi−Podがいくら売れても所詮は他の消費に廻すことができたであろう所得を削って得られる代替消費に過ぎず、当該企業にとってはプラスでもマクロ経済全体への影響はほんの僅かである。

 これに止まらず、ものが高い、金利が低すぎるなどといった意見もそうだが、子供や老人は別として、自分に働く者と消費者としての二面性があることが忘れられがちなように思う。サラリーマンは労働者(供給)サイドの視点、主婦や学生は消費者(需要)サイドの視点でしかものを考えていないから話が先に進まない。

 主婦や年金暮らしの老人が、「近頃の低金利はけしからん。どうせ銀行がくすねている。」などと憤るのは見当違いであり、別に銀行が不当にくすねているわけではなく、融資先の企業が不況のあおりで売上が低迷して金利負担能力がないだけ、もしくは、融資自体の需要が落ち込んでいるために金利が上がらないだけである。まともな(返済される可能性の高い)融資の範疇では、たいした金利が取れないから高金利を狙い無理して無担保融資の拡大に走り、その結果新銀行東京三井住友銀行のように詐欺に引っかかりドツボにはまってしまう。今の経済状況では、一般の人が期待するような5%とか8%とかいった高金利なんて到底払えないのだ。

 また、自動車や家電製品など価格を抑えて年々スペックを上げているのに、非正規雇用者を解雇してまで生産調整をしなければならないほど売上が落ち込んでいるのも、何も開発者の努力が足りない訳でも、営業担当者が怠けている訳でもない。これらの原因も単に消費者の所得が減って消費に廻せないだけであり、若者の車離れ・嗜好の変化などというのは的外れな意見だ。Willやi−Pod、ユニクロ、携帯電話料金を合わせてもせいぜい10数万円単位の金額であり、百万円単位の車を諦めたのなら、もっと他の分野の消費が盛り上がってもよさそうなのに、一向にそういった話も聞かない。若者の嗜好が変化して車に興味を失ったのではなく、給料が安くて、あるいは、まともな職に就けなくて所得が低すぎるために、興味を持つ対象から外さざるを得なかったのではないか。

 需要と供給、生産・サービスと消費は、まさにキャッチボールの関係と同じで、どちらか一方が過剰な場合は大きくバランスを崩すことになる。平成不況の現在は、5人の投手(供給者)の球を3人の捕手(需要者)が受けているような状態で、落球が多いうえに、渾身の剛速球を投げ込んでくる投手に対して捕手の返球は山なりのスローボールでリズムも悪い。

 投手のポテンシャルを上手く引き出すには、適切な人数の捕手の存在が必要であり、生産と消費の関係もこのとおりだ。生産→消費→生産→消費・・・という循環を繰り返しながら経済は成長する。消費が生産を拡大させ、働く者の給与の源泉となるのだ。いたずらに自らの努力不足を反省しても事態は好転しない。もっと世の中のお金の流れに関心を払うべきだ。

 消費を活性化させるにはどうしたらよいか。アメリカ人のように過剰な借金をする人は別として消費が所得の内数である以上、消費を増やすのは所得を増やすしか手はない。一部を除いて平成不況でバランスシートが大きく痛んでいる企業に所得増加の役割を負わせるのは難しく、また、それは家計も同じことだ。長年頼り切ってきた外需も弱り果てている。すると残りは政府しかない。こういうことを言うとすぐに「国に頼るな」とか「財政赤字をどうするのか」、「大きな政府はけしからん」などという意見がでてくる。困ったときに頼りにするために政府機関があるのであって、国に頼るなどというのは存在を自己否定するようなものだ。

 その点、欧米は割り切ったもので、つい先日まで新自由主義構造改革主義の総本山と目されていたIMFが、昨年の金融危機を受けて即座に各国に対して財政出動を要請するなど極めて現実的で変わり身も早い。また、日本に対しては小さな政府や自由貿易を声高に要求する一方で、自分たちは人口比で日本の倍以上の公務員数を抱える大きな政府を維持したり、自国の農業を過度に保護したり、まさに自国の利益のためなら形振り構わない姿勢なのだ。

 もうすぐ20年にも達しようとするバブル崩壊以降の失われた時代から脱却するには、政府の大規模かつ長期の財政政策+金融政策が欠かせない。管理通貨制度を上手く活用し、政府紙幣や日銀の国債引き受けなどによって、雇用や所得を生み出す機会の創出に知恵を絞り、十分に発達した生産力に見合うだけの消費力を供給することが求められている。そうすることが、冒頭のサラリーマン氏の努力に報いる最良かつ最速の方法だと思う。